国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
REDDプラス・海外森林防災研究開発センター

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気候変動枠組条約 COP24 サイドイベント(公式)

本イベントは終了しました

劣化した熱帯林の再生
炭素、生物多様性とコミュニティのレジリエンスの調和を考える

開催報告

本サイドイベントでは、熱帯林の劣化の問題に焦点を当て、森林ランドスケープの回復、持続可能なサプライチェーン、コミュニティーレジリエンス、生物多様性の保全と気候変動緩和との関連について発表および議論が行われた。

日本の林野庁の本郷浩二次長のオープニングスピーチの後、国連熱帯木材機関(ITTO)のゲルハルト・ディターレ事務局長の基調講演「熱帯林ランドスケープ再生におけるグリーンなサプライチェーンの重要性(The importance of "Green" supply chains in tropical forest landscape restoration)」が行われた。基調講演では、熱帯林が森林劣化による主要な炭素排出源であり、継続的な世界の人口増加は森林破壊と森林劣化を招き、パリ協定で定めた気候変動目標を達成することが困難になるが、木材やその他の森林製品の持続可能なサプライチェーン関連の森林ランドスケープ回復への大規模投資の実施が重要な解決策の一つであることが述べられた。ディターレ事務局長は、その投資が、地方の雇用、貧困削減、地域社会のレジリエンスの向上、木材の安全保障、追加的な気候変動の緩和・生物多様性保全効果などがあることを説明した。また、ITTOは国連食糧農業機関(FAO)、世界銀行、世界自然保護基金などと持続可能な世界のための持続可能な木材イニシアティブを実施していること、今後持続可能なサプライチェーンに関するイニシアティブや法が必要なことも述べられた。

森林研究・整備機構森林総合研究所の佐藤保森林植生研究領域長は、「どのように森林劣化を評価するのか?森林生態学者の視点(How to evaluate forest degradation? A forest ecologist’s view)」について、森林劣化を広域に把握する困難さや火災が森林の質や種構成に及ぼす影響など、森林劣化を評価する科学的な意義ついて発表した。また、佐藤領域長は、様々な空間スケールでの森林劣化を評価するための衛星搭載ライダーと無人航空機(UAV)の潜在的役割についても述べた。

コートジボワールのMALEBI女性協会のデルフィネ・アフォッシ会長は、「森林回復・修復活動と女性のエンパワーメント:コートジボワールMALEBIの経験(Forest Restoration and Rehabilitation Activities & Women Empowerment: MALEBI's Experience in Côte d'Ivoire)」と題し、女性による森林再生事業が収益性の高いビジネスベンチャーになったITTOのプロジェクトの成功例を述べた。MALEBIはITTOから技術的および財政的支援を受け、チークとアカシアの樹木を使用して100ヘクタールのAhua登録林を復元し、キャッサバの植え付けを行った。MALEBI女性協会のメンバーは安定した収入源の確保と木炭生産のための木材の安全な供給を行っており、天然資源管理における女性のエンパワーメントに対する認識を変えていることを説明した。これらの様子を紹介したビデオが会場で上映され、好評を博した。

FAOのマルゴラザタ・ブシュコ-ブリッグス氏は、「FAOの森林やランドスケープ回復に関連する活動のスナップショット(Snapshot of FAO's work related to forest and landscape restoration)」という題目で、FAOの林業およびランドスケープ回復の取り組みについて発表した。同氏は森林再生を特に取り上げている気候変動に関する政府間パネルの特別報告や、生物多様性の主流化のための分野横断的な取り組みの重要性を強調した最近の生物多様性条約締約国会議での成果、そして森林再生に対するITTOを含めた協力についても言及した。

質疑応答では、ITTOが関わるサプライチェーンイニシアティブのための独自の検証または認証スキームの確立、ステイクホルダーが考える森林ランドスケープの回復のための要件、現在の森林劣化のモニタリング技術などについて参加者から質問があり、活発な議論が行われた。

ITTOのウェブサイトに、より詳細な概要が掲載されています。

https://www.itto.int/ja/news_releases/id=5902

プレゼンテーション資料のダウンロード

本イベントは終了しました

劣化した熱帯林の再生
炭素、生物多様性とコミュニティのレジリエンスの調和を考える

日時

2018年12月13日(木曜日) 16:45-18:15

場所

ポーランド・カトウィチェ市 COP24 公式サイドイベント会場 Room Pieniny

概要

森林劣化による炭素の減少は森林減少からのそれよりも高くなると見積もられており、劣化した熱帯林ランドスケープの再生は、こうした問題を解決に導く一つの機会として期待されている。このような再生の促進に向けた炭素、生物多様性とコミュニティのレジリエンスとの調和のためには、政策的な変化が必要である。本イベントにおいては、これに取組む最新の活動に焦点を当て議論を深め、熱帯林の再生に向けた世界的な取組みの推進に貢献する。

プログラム

モデレーター:Ms. Sheam Satkuru(国際熱帯木材機関(ITTO))

開会挨拶:本郷浩二(林野庁次長)

スピーカー:

Dr. Gerhard Dieterle,国際熱帯木材機関(ITTO)

佐藤 保,(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所

Ms. Ahoussi Delphine, MALEBI Women's Association and member of the AfricanWomen’s Network for Community Management of Forests, Côte d'Ivoire

Ms. Malgorzata Buszko-Briggs,国際連合食糧農業機関(FAO)

パネルディスカッション

テーマ: 森林劣化の状況、原因と解決策について持続可能な森林経営、生物多様性の保全、コミュニティのレジリエンスを高めるためのREDD+による技術的・政策的対応を含めた展望について議論する。

開催団体

主催:(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所

共催:国際熱帯木材機関(ITTO)

連絡先

(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所:佐藤保,climate@ffpri.affrc.go.jp

※案内チラシは こちら からダウンロードできます。(0.8Mb)