国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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研究コラム/シリーズ☆森林と国際関係

森林と国際関係(6)- 生態系ベース適応と緩和 -

森田 香菜子(森林総合研究所 国際連携・気候変動研究拠点)
(2016年8月4日執筆)

今回は、生物多様性条約(CBD)および国連気候変動枠組条約(UNFCCC)両条約にまたがる対策である、生態系ベース適応(ecosystem-based adaptation)と生態系ベース緩和(ecosystem-based mitigation)について説明します。

生態系ベース適応とは、SCBD(2009)に記されている通り、気候変動の悪影響に対する人々の適応を支援する全般的な適応戦略の一環として、生物多様性や生態系サービス(人類の福利への生態系の直接的・間接的貢献)を活用することです。生態系ベース適応には、生態系の持続的な管理、生態系の保全や回復も含まれます。具体的な対策としては、傾斜地の安定や流量調整のための森林保全や回復、変化する気候条件からのリスク増加に対処するための多様なアグロフォレストリーシステムの確立、沿岸洪水や浸食を軽減するためのマングローブや他の沿岸湿地の管理/回復を通じた沿岸防護などが挙げられます。

生態系ベース緩和とは、Doswald and Osti(2011)に記されている通り、気候変動の緩和を推進する炭素貯留や隔離に生態系を活用することで、生態系の創出・回復・管理を通じて排出削減を達成します。具体的な対策としては、森林回復、泥炭地の保全などが挙げられ、それらの対策を含むREDD+も生態系ベース緩和の一つとして期待されています。

気候変動の緩和策・適応策への生態系アプローチの適用については、2004年のCBD COP7の決定文書で言及されましたが、生態系ベース適応と緩和が注目され始めたのは、2010年のCBD COP10からです。UNFCCCの方でも、2011年に生態系ベース適応に関する情報収集が開始され、その情報をまとめたデータベースが作成されるなど、生態系ベース適応と緩和は、両条約をつなぐ重要な対策の一つとなっています(Morita and Matsumoto, 2015)。生態系ベース適応・緩和の概念が馴染まないセクターもありますが、森林セクターでは天然林の保全や森林生態系の回復などの対策を通じて、生態系ベース適応・緩和の実施が期待できます(Thompson et al., 2009)。今後研究と実務の両面から、森林セクターの効果的な生態系ベース適応・緩和の検討が必要になってくると考えます。

Doswald, N. and Osti, O. (2011) Ecosystem-based approaches to adaptation and mitigation - good practice examples and lessons learned in Europe. UNEP-WCMC and BfN Federal Agency for Nature Conservation. 43 pages.

Morita, K. and Matsumoto, K. (2015) Enhancing biodiversity co-benefits of adaptation to climate change. Filho, W. L. ed. Handbook of Climate Change Adaptation. Springer-Verlag Berlin Heidelberg. 953-972.

Secretariat of the Convention on Biological Diversity (SCBD) (2009). Connecting biodiversity and climate change mitigation and adaptation: Report of the second ad hoc technical expert group on biodiversity and climate change. Montreal, Technical Series No. 41, 126 pages.

Thompson, I., Mackey, B., McNulty, S., Mosseler, A. (2009). Forest resilience, biodiversity, and climate change. A synthesis of the biodiversity/resilience/stability relationship in forest ecosystems. SCBD, Montreal. Technical Series no. 43, 67 pages.