国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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2011年の動き

国際交渉の状況(~2011年3月)

REDD+ についての議論は、2005 年のCOP11モントリオール会合においてパプアニューギニアとコスタリカが、Avoiding Deforestation(森林減少の回避)というキーワードを用いて森林減少の削減による温室効果ガス排出削減対策を新しい議題として提案したことから始まりました。その後、他の国々からも同様の提案がなされ、それらを総称してREDD(Reducing Emission from Deforestation in Developing countries:森林減少・劣化による排出削減)と呼ばれるようになりました。当初、REDD 二つ目のDは発展途上国を表すDであったのですが、その後、森林劣化(Forest Degradation)の削減も同様に重要であると言う議論が広がり、2007 年のCOP13 バリ会合において、REDD のDD には森林減少(Deforestation)と並列して森林劣化も含まれることで合意されました。

COP13 で合意されたバリ行動計画には、森林減少・劣化による排出削減と並んで、「保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素貯留量の増加」が明記されました。この考え方が2008年COP14ポズナン会合において決定案に含まれ、REDD+と呼ばれるようになりました。2009年COP15でのコペンハーゲン合意においては、REDD-plusという表記で、その枠組みの早期構築の必要性に言及がなされました。

現段階(2010年12月時点)では、REDD+の政策的・技術的課題の抽出はほぼ終了しており、それぞれの課題に関する各国からの主張の整理・検討が進められている状況です。本来は、国連特別作業部会(AWG‐KP、AWG‐LCA)及びSBSTAにおける検討を経て、COP15において結論が出される予定となっていたのですが、結局決定を取りまとめるには至らず、引き続きAWG‐LCAにて検討が行われることとなっています。COP15では、SEBTA31での検討を踏まえた上でREDD関連活動の方法論的指針が採択されましたが、そこでは以下のような事項が規定されています。

  • 途上国に対するREDD関連活動については、以下を考慮する
    • 森林減少・劣化の誘因の特定
    • 排出削減や吸収増加等につながる行動の特定
    • 排出量推計にはIPCCの指針を用いる
    • 状況に応じてリモートセンシングや地上調査の組み合わせ等による国家森林モニタリングシステムを構築する(場合によって準国家システムも構築)
  • 他のCOP決定に沿った形で、IPCCによるさらなる作業の必要性を認識する
  • モニタリング、報告における先住民、地域コミュニティの効果的な取り組みのための指針を開発することを推奨する
  • 排出量推計の向上のための途上国の能力強化支援を推奨する
  • 先進国・国際機関に対して、IPCC指針やガイドラインの実施に係る途上国の能力向上の強化を招請する
  • リファレンスレベルを設定する途上国は、過去のデータや国情を考慮しつつ、透明性を確保すべきことを認識する

このように、現状ではUNFCCCにおいて国際制度の構築には至ってはいません。しかしながら、REDD+に関する自主的な活動はすでに広く着手されています。2010年5月27日に開かれた閣僚級会合「気候と森林に関するオスロ会合」においては、REDD+の活動や資金支援を促進するため、関心国による「REDD+ パートナーシップ」が構築されました。これは条約上の公式なプロセスが決着していない中、非公式な形ではありますがREDD+を進展させていこうという取り組みです。また、REDD+に関する多国間・二国間のプログラムも進められており、世界銀行の森林炭素パートナーシップ・ファシリティー(FCPF)、食糧農業機関(FAO)や国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)の共同提案によって設立されたUN-REDD、ノルウェーとインドネシアのパートナーシップ等が代表的な例として挙げられます。

さらに、民間のVoluntary Carbon Standard(VCS)はREDD+活動によるクレジット化をいち早く制度化し、自主的なプロジェクトレベルでのREDD+の活動を推進しています。これらの自主的な枠組みは、将来的にUNFCCC における枠組みやその算定ルールに対して影響をもたらすことが考えられます。

以上のように、REDD+の議論は基本的な森林減少の回避から始まり、森林劣化、そして保全活動について、段階的に対象とする活動が増えて、現在のREDD+の姿となりました。その背景には、森林減少だけを対象とした場合、ブラジル、インドネシア、熱帯アフリカ諸国以外の多くの途上国が枠組みに参加できないという理由から森林劣化が対象に加えられ、さらに、REDDだけでは森林保全政策や植林政策を進めている途上国が参加できないという理由から+ の部分の活動が加えられたという、各国それぞれの事情があり、今後の交渉の行方が注目されます。

REDDに関する主な国際交渉の経緯
主要マイルストーン 概要
COP11(2005年)
@モントリオール
パプアニューギニアとコスタリカがREDD(Reducing Emissions from Deforestation in Developing Countries)を共同提案
COP13(2007年)
@バリ
「バリ行動計画」で、次期枠組における検討項目としてREDD+を対象とすることに合意
※この間、AWG-LCA(政策論)およびSBSTA(方法論)で継続議論
2008年6月 世界銀行「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF)」の運用開始
COP15(2009年)
@コペンハーゲン
「コペンハーゲン合意」では森林減少・劣化からの排出の削減や吸収の役割の重要性や、REDD+を含む制度を直ちに創設することに言及
REDD+に関する方法論のガイダンスを決定
※この間、AWG-LCA(政策論)およびSBSTA(方法論)で継続議論
二国間枠組みの立ち上げ(フランス、ノルウェー等)
COP16(2010年)
@カンクン
REDD+の制度・政策面の議論が本格化

出所:各種資料より作成

参考・引用情報一覧

  • 松本光朗(2010)REDD+ の科学的背景と国際議論.森林科学60.2-5.
  • UNFCCC(2009)コペンハーゲン合意(外務省仮訳)
  • UNFCCC(2009)途上国における森林減少・森林劣化由来の排出量の削減ならびに森林保全、持続的な森林管理及び森林炭素貯留の強化の役割に関連する諸活動のための方法論的なガイダンス(GISPRI仮訳)