国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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検証システムの構築

3 実用的な計測結果の検証システムの構築 ~ カンボジア

(1) はじめに

REDDプラスにおける森林被覆状況や炭素蓄積量などのモニタリングにはリモートセンシングの利用が提唱されており、透明性、一貫性、他国との比較可能性、完全性、正確性が用件として挙げられています。このためリモートセンシングによるモニタリング結果を検証し、その精度を評価する必要があります。しかし、発展途上国においては地上における観測データが不十分であるため、上記の用件を満たすのは容易ではありません。そこで、本研究では発展途上国においてREDDプラスのための実用的な計測結果の検証システムの開発を行うことを目的とします。2017年度はこの目的達成のため、複数の判読者が作業を行う際の問題点抽出とその解決手法の提案を行いました。

(2) 複数の判読者が作業を行う際の問題点抽出とその解決手法

①判読カードの作成

途上国では、森林被覆図を作成する際にはランドサット(Landsat)などの中解像度衛星画像を判読して作成します。中解像度衛星画像は空間解像度が30m程度であるため、拡大しても地物を直接確認することができず、その判読はカラー合成画像の色、テクスチャ、形、道路網や周りの土地被覆との関係などから推測します。このため判読者の経験などにより、判読結果にばらつきが出てきます。この問題を解決すると同時に、作成された森林被覆図の検証が可能となるような検証システムおよび判読カードを作成しました。

判読カード作成にあたってはまずFAOが開発したCollect Earthを用いて、Google Earth画像上に格子状に配置した約20,000点を判読しました。次に判読された点のうち、アクセスのよい場所を選んで地上調査を行いました。これらCollect Earthでの判読結果と地上調査の結果を組合せたものが判読カードです。

判読カードは、ストレージ上では図-11のディレクトリ構造を持って保管されていますが、必要に応じて図-12のように表形式で表示することも可能であり、またGISソフトウェア(ArcGIS)にインポートし、現地写真へのハイパーリンクを持つデータベースとして扱うことが可能です(図-13)。

今回の対象地としたカンボジアでは衛星画像判読のスキルを持つ者が限られる一方で、多くの若い技術者が採用されています。判読カードはこうした経験の少ない判読者が統一された基準で作業を行う際に用いられています。また、新人の教育や現地調査計画策定の基礎資料として用いられています。

図-11 ストレージ上での判読カード

図-12 表形式で表示した判読カード

図-13 GISソフトウェア(ArcGIS)と統合した判読カード

②森林劣化状況把握へのドローンの導入

途上国の多くの国でFREL/FRLが提出されており、国レベルでのモニタリング技術は確立しつつあります。一方でREDDプラスのプロジェクトを行う際のモニタリング技術については、プロジェクトが適切に実行されているかをモニタリングする手法が求められます。特に、森林劣化モニタリングはプロジェクトで行われている対策の効果を測る重要な指標となります。

2016年度は検証システム構築のための現地調査の補助としてドローンを導入しましたが、2017年度はドローンによる森林劣化モニタリングの適用可能性について検討を行いました。

検証システム構築のための現地調査を行った際に、飛行条件が揃っている森林でドローンによる撮影を行いました。図-14はドローンから撮影されたステレオペア写真です。デジタルステレオ解析が可能なソフトを使って検証したところ、単木単位で樹高の測定が可能でした。また、図-15はSfM(Structure from Motion)技術を用いて作成されたDSM(Digital Surface Model)です。いずれの技術を使っても林冠高の測定が可能でした。既存の研究で、SfMを用いて計測されたCHM(Canopy Height Model)からAGB(Above Ground Biomass)が推定できることが示されており、さらなる実証実験を積み重ねることによりドローンをプロジェクトレベルの森林劣化モニタリングに利用できるものと思われます。

図-14 ドローンから撮影されたステレオペア写真

図-15 SfM(Structure from Motion)により作成されたDSM

(3) まとめ

判読カードの作成により、複数の判読者、特に経験の少ない判読者がランドサット画像やGoogle Earth画像を判読できるようになりました。判読カードは基本的にディレクトリ構造を持ったデータをして保存されており、表形式で一覧表示できると同時にGISソフトウェア上で表示できることから、画面上で判読を行っている際に参照することが可能です。

ドローンの導入により現地までの移動時間が節約され、調査を効率的に行うことができるようになりました。さらに、ステレオペア写真を用いた樹高の測定やSfM技術を用いたDSM作成により林冠高が推定可能であることわかり、森林劣化モニタリングへの活用が期待されています。