国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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検証システムの構築

3 実用的な排出削減量の計測結果の検証システムの構築 (カンボジア)

(1) はじめに

REDDプラスにおける森林被覆状況や炭素蓄積量などのモニタリングにはリモートセンシングの利用が提唱されており、透明性、一貫性、他国との比較可能性、完全性、正確性が用件として挙げられます。このためリモートセンシングによるモニタリング結果を検証し、その精度を評価する必要があります。しかし、発展途上国においては地上における観測データが不十分なため、上記の用件を満たすのは容易ではありません。そこで、本研究では発展途上国においてREDDプラスのための実用的な計測結果の検証システムの開発を行うことが目的です。本年度は、衛星画像からの森林劣化地を把握するために必要なドローンからの写真撮影およびそれらの解析を行いました。

(2) 衛星画像から森林劣化地の把握のために必要なドローンによる写真撮影

衛星画像からは、目視判読においても森林部分についてその劣化具合から、カンボジアの常緑広葉樹林において2-3段階に層化しクラス分けすることができます。しかし衛星画像の空間分解能は20mから30mであり、また森林劣化は面的に不均質に分布することから層化したクラスがどの程度劣化しているかを狭い範囲の地上調査の結果と直接対応付けることは難しい。このため、地上調査の結果と衛星画像から得られるクラスをつなぐために空中写真の利用が求められます。途上国においては、空中写真の利用には限界がありますが、近年はドローン技術の発展もあり、狭い範囲においてはドローンを用いて空中写真を安価に入手することが可能となっています。本節では衛星画像から森林劣化地を把握するために面的な広がりをもつ検証データとして、ドローンからの写真の利用可能性について述べます。

今回、使用したドローンは、DJI社製Phantom4で、搭載されているカメラは、センサーサイズが1/2.3型、有効画像数、1,240万、視野角94度です。また撮影に使用したアプリは、GSProとDroneDeployで、飛行高度150m、オーバーラップ85%、サイドラップ80%の条件で撮影し、撮影された範囲は、およそ20haで、1月にプレイロンで9ヶ所、2月にモンドルキリ、ラタナキリ州で19ヶ所、コンポントム州で8ヶ所の合計36ヶ所で撮影しました。図-12は、プレイロンでの調査から得られたオルソ写真です。

図-12 プレイロン地区で撮影されたドローンからのオルソ写真

背景は2019年1月11日取得のSentinel-2画像

(3) ドローンからの取得された写真の解析

ドローンから撮影された写真は、それぞれ中心投影の写真でありGISなどで直接利用できないが、ここから写真相互の幾何学的位置や姿勢を推定し、写真に写っている地物の相対的な位置関係から点群を発生させることで数値表層モデル(DSM: Digital Surface Model)を作成し、それを利用してオルソ写真を作成することができます。また点群を用いることで数値地形モデル(DTM: Digital Terrain Model)を生成し、DSMとDTMの差分から林冠高(DCHM: Digital Canopy Height Model)、さらにギャップの位置や大きさなど森林劣化に関係する林分構造を推定することが期待されます。これらの一連の処理は、ある対象を撮影した複数の写真から対象の形状を復元するSfM(Structure from Motion)と呼ばれる技術を用いており、こうした技術を使うことで複数の写真から3次元モデル(森林分野では林冠高など)を容易に作ることができます。こうしたソフトウェアとしては、Agisoft社製のMetashape(旧名Photoscan)やPix4D社製Pix4D mapperなどが挙げられます。ここでは、カンボジアのカウンターパートも利用しているPix4D mapperを用いて解析しました。画像間の演算などはフリーのGISソフトウェアであるQGISを用いました。図-13から図-17は、Pix4Dにより生成された点群、DSM、オルソ写真、DTMやDCHMを示します。

図-13 コンポントム地区タワーサイトで撮影された写真から発生させた点群

図-14 コンポントム地区タワーサイトで撮影された写真から発生させたDSM

図-15 コンポントム地区タワーサイトで撮影された写真から作成したオルソ写真

図-16 コンポントム地区タワーサイトで撮影された写真から作成したDTM

図-17 コンポントム地区タワーサイトで撮影された写真から作成したDCHM

森林劣化に関係する指標としてギャップの大きさや頻度などは、DSMのみからでもある程度推定可能ですが、林冠高については正確なDTMでないと推定できません。本節では、過去にLiDARデータが取得されている場所についてドローンの撮影を行い、両者のDTMを比較することで、ドローンから推定される林冠高について評価しました。図-18は、LiDAR、ドローンのそれぞれから作成したDTMを示します。撮影を行った範囲は、ほぼ平坦地ですがLiDARからのDTMでは、谷筋など微地形が再現されています。しかしドローンからのDTMでは、微地形は再現されておらず、森林の疎な部分では低く、密な部分では高くなるという森林被覆の影響を強く受けています。

また同一地盤上と思われる道路上で絶対高を比較すると、ドローンからのDTMの方がおよそ13m高く、この原因は、ジオイド高モデルの違いなのか、GPSの誤差なのかについては、さらに検証を進める必要があります。

図-19は、ドローン_DTM(系統的な誤差と思われる13mを引いた値)とLiDAR_DTMの差分を示している。この結果から、差分の分布の中心は5m付近にあり、森林の密な部分では、DTMが過大に推定されていることが明らかとなりました。このため、ドローンから作成されたDCHMは、LiDARからのDCHMに比較して過小評価となっていることに留意することが必要です。

図-18 LiDAR、ドローンのそれぞれから作成したDTM

図-19 ドローン_DTMとLiDAR_DTMの差分

系統誤差13mをドローン_DTMから引いて計算

(4) まとめ

衛星画像から森林劣化を評価するには、空間的に広がりをもつ検証データが必要ですがドローンを用いることにより、安価かつ効率的に検証データを取得できます。

本年度、カンボジアでは、1月にプレイロンで9ヶ所、2月にモンドルキリ、ラタナキリ州で19ヶ所、コンポントム州で8ヶ所の合計36ヶ所の検証データを取得できました。

ドローンにより撮影された写真からは、Pix4DなどSfM処理が可能なソフトウェアを用いることにより、点群、DSM、オルソ写真、DTM、DCHMなどを作成可能です。作成されたプロダクトのうち、DTMについて、LiDARからのDTMを比較したところ、森林が密な部分では過大推定となっており、したがってドローンから推定されるDCHMは過小推定となることが定量的に示されました。

今後は、DCHMの推定精度のさらなる検討と利用可能性の評価を進めるとともにDSMによるギャップの大きさ、分布密度などから森林劣化の程度を示す指標化開発が求められます。