国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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検証システムの構築

3 実用的な排出削減量の計測(モニタリング)結果の検証システムの構築

(1) はじめに

REDDプラスにおける森林被覆状況や炭素蓄積量などのモニタリングにはリモートセンシングの利用が提唱されており、透明性、一貫性、他国との比較可能性、完全性、正確性が用件として挙げられます。このためリモートセンシングによるモニタリング結果を検証し、その精度を評価する必要があります。しかし、発展途上国においては地上における観測データが不十分であるため、上記の用件を満たすのは容易ではありません。そこで、本サブテーマでは途上国においてREDDプラスのための実用的な計測結果の検証システムの開発を行うことを目的とします。2016年度は、この目的達成のため、1)2015年度までに作成された判読カードの改良と地上調査へのドローンの導入、2)季節林の判読への季節変化情報の導入を行いました。

(2) 判読カード等の改良と地上調査へのドローンの導入

①最新ランドサット画像フィールドの追加

2015年度まで、判読カード作成のためカンボジア全土に3kmグリッドを設定し、その交点約20,000地点で土地被覆状況をGoogle Earthの画像を使って判読しました。これらの判読結果を昨年度までに行われた地上調査の結果と比較すると、判読では落葉林だったが地上調査では草地や農地でした、また判読では常緑林だったが地上調査では農地であったなどの判読間違いが生じていました。落葉林と常緑林同士の判読ミスはありませんでした。これらのことからGoogle Earthなどに採用されている高解像度衛星データを用いた場合において落葉林と常緑林の判読ミスはほとんど見られないが、森林と判読した部分が他の土地被覆タイプであるという判読間違いが生じることがわかりました。これらの間違いを検証すると判読時のGoogle Earth画像取得時には森林であったが、その後に森林の土地利用転換が起こり、調査時点では森林以外の土地被覆であるということがわかりました。このため判読したGoogle Earth画像の隣のフィールドに調査時点に近い日付で取得されたランドサット画像を追加しました。

②バイオマスフィールドの追加

2015年度までに地上調査を行った森林については地上部バイオマスを計算し、判読カードにフィールドを追加しました(図-15)。

図-15 バイオマスフィールドとランドサット画像フィールドを追加した判読カード(注:緯度経度などは省略してある)

③ArcGISへのデータベース化(図-16)

ArcGISへ判読カードデータベースをインポートし、GIS上で他の空間データとの関係解析ができるように改良しました。

これら判読カードのデータベース化作業は、カンボジア側カウンターパートにより2015年までに調査を行った240点については完了しており、2016年度調査分についても調査結果がまとまり次第、ArcGISへインポート作業を行い、データベース化される予定です。

図-16 ArcGISへインポートした判読カード

④土地被覆状況確認へのドローンの導入

検証システム構築のための現地調査では、調査地点が森林の場合にはカウント木法によるサンプリングで樹高と胸高直径を測る毎木調査を行います。一方で森林以外の土地利用では、土地被覆状況の確認のみを行います。土地被覆状況の確認は、調査地点の中心から4方向の写真を撮影した後、野帳に土地被覆状況を記録します。この調査自体にはそれほどの時間はかからないが、現地に到達するための時間がかかり、特に調査者の体力を消耗します。このため土地被覆状況の確認調査の効率化は、速やかな検証システム構築の工程を大きく左右する要因となります。

2016年度は、土地被覆状況確認の効率化を測るためドローンの導入を行いました。導入に先立ちカウンターパート研究員を招へいし、北海道支所の試験林においてドローンを安全に飛行させるための研修を行いました(図-17)。今回の試みは森林以外の土地被覆状況確認が目的であるが、今後、森林測定へ応用することも考えられることから、ドローンより撮影された空中写真から点群データ、林冠の3Dモデル、DSM(Digital Surface Model)を作成する研修も行いました。カンボジアにおいて、ドローン導入のためのワークショップを開催(図-18)した後、現地調査に同行し、実際のドローンからの撮影を現地で指導しました(図-19)。

図-17 北海道支所における安全飛行研修(左)と空中写真解析研修(右)

図-18 カンボジア森林局におけるワークショップ開催

図-19 現地におけるドローン飛行に指導(左)と撮影された空中写真(右)

(3) 季節林の判読への季節変化情報の導入

カンボジア政府による土地被覆図作成は、多時期のランドサット画像を用いてセグメンテーションし発生させたオブジェクトを目視判読によって分類しています。目視判読に用いるのは雲なし画像であり乾季に取得された画像が多い。このため、森林部分の季節性を直感的に知ることができないことから、誤判読が生じる場合があります。ここでは、高頻度観測衛星を用いて森林の季節変化情報を図化し、季節林の判読への季節変化情報の導入を試みました。

使用したデータは、2013年12月1日から2015年1月の間に取得されたPROBA-Vの10日間合成のNDVIプロダクト40シーンです。PROBA-Vは、SPOT VEGETATIONの植生ミッションを引き継ぐため後継機としてESAにより打ち上げられました。空間分解能はVNIR(可視光域)では、100m(直下)、360m(スワス両端)、SWIR(短波長赤外域)では、200m(直下)、600m(スワス両端)であり、プロダクトとしてNDVIの10日間合成画像が空間分解能333mで作成されています。

図-20 主成分分析によりノイズを軽減したNDVIの季節変化
(グラフのX軸は40シーンの10日間データによる時間を示す)

この空間分解能333mは、これまで用いられてきた高頻度観測衛星NDVIプロダクトの空間分解能(NOAA AVHRR、SPOT VEGETATIONが1km、Terra/Aqua MODISが500m)よりも高分解能です。40シーンのNDVIデータに対して時系列方向に主成分分析を施しました。また第3主成分までを用いた逆変換を行いノイズの影響を軽減した時系列NDVIデータを作成しました(図-20)。主成分分析画像から、赤:第2主成分、緑:第1主成分、青:第3主成分のカラー合成画像を作成しました(図-21)。主成分分析の結果、第1主成分はNDVIの年間平均、第2主成分は半年を周期としたNDVIの年変化、第3主成分以降はそれよりも短い周期の変動を示すと思われます。このため、図3-24に示す主成分画像からのカラー合成画像では、緑は常緑林、黄色は落葉林を示している。これらの画像はKMZファイルに変換することで判読システムであるCollect Earth上で利用できます。

図-21 主成分分析画像から作成したカラー合成画像
(赤:第2主成分、緑:第1主成分、青:第3主成分)

(4) まとめ

「2015年度までに作成された判読カードの改良」では、地上調査で得られた毎木調査データから計算された地上部バイオマスを示すフィールドと地上調査時に近い日時に取得されたランドサット画像のフィールドを追加し、ArcGISへインポートしてGISソフトウェア上でデータベース化しました。これにより衛星データ解析結果との関連付けが可能となり、土地被覆図作成のための衛星画像判読結果の精度検証が容易となりました。また地上調査では、ドローンを導入することにおり現地までの移動時間が節約され、森林の調査に割ける時間が増えました。

「季節林の判読への季節変化情報の導入」では、地上分解能333mの高頻度観測衛星PROBA-VのNDVIデータを用いて判読に役立つ季節変化情報を導入しました。

今後は、2016年度までに開発された技術をマニュアル化し、複数の判読者が情報を共有しながら衛星画像判読の作業やその結果の検証ができるような手法を提案していく必要があります。