国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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研究員現場レポート/日韓シンポジウム(参加報告)

日韓台シンポジウム-持続可能な森林生態系管理-参加報告

高橋正義 高橋正義(森林総合研究所 森林管理研究領域)

2014年5月28日から30日、韓国・ソウル大学で、持続可能な森林生態系管理に関する日韓台シンポジウム(Joint International Symposium By Japan, Korea and Taiwan “International Symposium on Sustainable Forest Ecosystem Management in Rapidly Changing World”)が開催されました。このシンポジウムは日本、韓国、台湾3カ国の森林管理関係の学会とその関係者によって持ち回り開催されているもので、今回は、台湾の國立宜蘭大學(2012年9月)、鹿児島大学(2013年9月)に続く第3回目の開催として、ソウル大学のChung Joo-Sang 教授を中心とした韓国の森林管理に関係する関係研究者がオーガナイズしました。シンポジウムには、台湾、日本、韓国をはじめ、米国などの森林管理分野の研究者約60名の参加のもと、森林経理、森林計測、数理モデルなどの林業生産とその持続可能性について議論がなされました。森林総合研究所からは高橋が参加し、森林総研によるREDD推進体制緊急整備事業の成果の一つであるパラグアイでの活動とその成果を紹介しました。その様子について、REDDに関連する研究報告や関連する話題も交えてご紹介します。

森林総研のREDDプラスに関する研究発表
2番目の口頭発表として、高橋が「パラグアイ・大西洋森林における衛星画像を用いた森林バイオマス量の推定」と題する報告を行ないました。この研究は、パラグアイの主要なエコリージョンの一つである「大西洋森林」を対象とし、2010年前後に撮影された多数の衛星画像を用いたモザイク衛星データと2011年から2012年にかけて実施した森林バイオマス量に関する地上調査のデータを組み合わせることによって、エコリージョン全体の全森林バイオマス量(地上部バイオマスおよび地下部バイオマス)を推定するというものです。モザイク衛星画像から森林部分だけを抽出した上で、調査地点のバイオマス量データと衛星画像の情報からバイオマスの量に応じて統計的に3つのクラスを作成し、森林を3つのクラスのいずれかに分けて集計する方法を用いた結果、「太平洋森林」にはおよそ180百万Mgの全森林バイオマスがあると推計されました。
参加者からは分類手法や衛星画像解析に関する技術的な質疑応答がありました。
REDDに関連する話題
REDDに関連する話題もいくつかありました。まず、溝上氏(九州大学)はカンボジアやミャンマーなどの熱帯季節林で行われている択伐施業について、実データや現地調査に基づく持続性を評価するとともに、択伐施業地域周辺の森林減少/劣化と社会的な要因について検討した報告を行いました。ゾウを利用した低インパクトの施業を行なっているが、択伐の回帰年が遵守されていないなどの技術的な問題や集材時に作設された林道によって違法伐採を誘引するなどの社会的要因が森林減少の背景にあるようです。
Thein Saung氏(九州大学)はミャンマーの択伐林における社会経済的な分析結果について発表を行いました。アンケート調査から、森林を保全するための様々なルールについて地元の人々には十分伝わっていないこと、今後の対策として住民への教育とルールの遵守に向けた取り組みが必要であるとしました。
REDDに関連する話題は日本からの講演に限られましたが、韓国や台湾からの参加者からも様々な質問が投げかけられ、REDDプラスについて強い関心を寄せていることが感じられました。
韓国による温暖化、REDDプラスに関連する話題
韓国の研究者から、韓国国内の森林からの温室効果ガス排出・吸収量に関する自治体レベルの分析や、木造住宅による炭素オフセットの評価など韓国国内を対象にした研究が複数紹介されました。韓国でも国内の森林に温室効果ガス吸収源としての役割を期待し、様々な対策に着手しているようです。
REDDプラスに関連する話題は研究報告としては行われませんでしたが、高橋の報告に関連した質疑応答の中で韓国の森林研究所の方から、インドネシアのロンボク島などで取り組んでいるREDD支援活動について簡単な紹介があり、REDDプラス活動において衛星画像を利用する上での問題点とその対処法について質問がありました。熱帯雨林が広がる地域では雲の影響を受けることから、森林総研では雲の影響を除去する技術開発を進めていることを紹介しました。
おわりに
今回のシンポジウムでは、上述の報告以外にも森林を持続可能に利用しつつ利潤を最大化するための分析など持続的に森林を利用するために必要な様々な話題について活発な議論と質疑応答がなされました。このような研究成果が今後現場でのREDDプラス活動に活かされることが期待されます。
個人的には、米国の参加者からはREDDプラスの枠組みとその動向、経済的なインセンティブやその実現可能性について、やや否定的なコメントを頂いたことが印象的でした。森林管理を研究する者として、森林を持続的に利用することの意味やその難しさについて熟知しているからこそのコメントのように感じたからです。REDDプラスには様々な知恵と努力を結集することが求められている、そういったことを再認識する良い機会になりました。

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