国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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研究員現場レポート/カンボジアワークショップ(開催報告)

カンボジアにおけるREDDセンターの取り組み紹介
- 森林モニタリングに関する技術ワークショップ -

森林総研REDD研究開発センター 平田 泰雅

概要

去る2014年7月2日から4日の3日間、カンボジア森林局において、森林局の職員を対象とした「森林モニタリングに関する技術ワークショップ」を開催しました。本技術ワークショップは、林野庁REDD推進体制緊急整備事業(平成22年度~26年度)および農林水産技術会議受託プロジェクト「高精度リモートセンシングによるアジア地域熱帯林計測技術の高度化」(平成23~26年度)の下で開発した森林炭素モニタリングのためのリモートセンシング技術および地上調査法の実務への応用の可能性の検討と技術移転を目的として、森林総合研究所と九州大学の共催で企画しました。

カンボジアにおける研究開発の経緯


写真1 カンボジアの季節林、乾季(上)と雨季(下)

カンボジアでは、現在、UN-REDDやJICA等多くのドナーの支援の下でREDDプラスの参照レベル設定やMRV体制構築に向けた取組が行われています。森林面積や蓄積に関する公式のデータソースとしては、1992年から2010年にかけてカンボジア森林局が衛星画像の目視判読で作成した森林分類図が使われています。しかし、カンボジアの森林は季節によって様相が大きく異なる季節林がかなりの面積分布していること(写真1)、地上調査の点数が極めて限られていることなどから、既存のデータソースはREDDプラスの参照レベル設定やMRVに使用するためには精度や透明性等の点で必ずしも十分とはいえない状況にあります。このため、森林総研REDD研究開発センターのモニタリングチームでは、平成22年度からこれまで4年間にわたって、森林局の職員とともに、より精度と透明性が高くカンボジアの実態に適した森林炭素モニタリング技術の開発に取り組むとともに、その成果としての得られた衛星画像を利用した時系列森林分布図の作成手法*や簡便な地上調査手法について、招聘による研修、カンボジアの森林での共同現地調査等を通じて森林局と共有してきました。

* A. Langner et al. / Remote Sensing of Environment 143 (2014) 122.130

しかしながら、こうした開発技術の実際の運用方法については、事業に直接関わった森林局職員には理解できていても、そのほかの職員や若手職員にはきちんと伝わっていないのではないかという懸念がありました。

そこで、今回のワークショップでは、カンボジア森林局のGIS担当部署の職員および新規採用の職員20名ほどを対象に、リモートセンシング技術を中心に、森林炭素モニタリングに必要な基礎的知識とカンボジアの特性に応じた実務への応用手法について3日間にわたりしっかりと説明と議論を行いました(表1)。

表1 ワークショップのプログラム
7月2日午前
「土地利用ベースマップ作成のためのLandsat8号衛星データの大気補正」 齋藤英樹(森林総合研究所)
「土地利用分類の検証システム」 平田泰雅(森林総合研究所)
7月2日午後
「デジタル写真とLiDARによる航空測量」 大野勝正(アジア航測(株)
「GISと統計モデルを用いた土地被覆変化分析」 松浦俊也(森林総合研究所)
7月3日午前
「高分解能衛星画像を用いた単木抽出」 古家直行(森林総合研究所)
「半自動分類のための判読ノート」 中北理(森林総合研究所)
7月3日午後
「オブジェクトベースのマッピング -分割パラメータの決定-」 平田泰雅(森林総合研究所)
「オブジェクトベースのマッピング -季節性の問題に対処する方法-」 平田泰雅(森林総合研究所)
7月4日午前
「航空機レーザースキャナーデータの利用と3次元判読」 太田徹志(九州大学)
「地上調査における誤差」 溝上展也(九州大学)

ワークショップの手法


写真2-1 ワークショップ全体の様子

写真2-2 古家 (森林総研北海道支所) の講義「高解像度衛星を用いた森林減少把握技術」に質問する森林局職員

ワークショップの進め方としては、日本側担当者による各技術の説明に十分な時間(1~2時間)を割き、カウンターパートによるクメール語への通訳を介しながら、随時森林局職員との間で質疑応答を行うことにしました。このことにより、個別技術に関する疑問点の解消を図り、さらに、実務への応用に向けた課題などについて非常に活発な議論をすることができました (写真2)。

特に参加者からの質問やコメントが多く寄せられたのは、具体的な地図作成手法(ミニマムマッピングユニット等)や森林調査における精度評価手法に関する議論でした。このことから、カンボジア森林局では既に技術系職員の多くが基本的な地図作成手法や森林調査手法を習得しており、実際の業務を通じてより具体的な技術的課題に直面している様子が伺え、過去数年間のREDDプラス関係の取組を通じて職員の技術レベルが大きく向上していることを実感しました。

写真2-3 オブジェクトベース分類について質問する森林局若手研究員(写真右)と回答する筆者(写真左、左端)

所感

カンボジアでは、内戦の影響で中堅層の技術者が絶対的に不足しています。しかし、現在、森林局ではREDDプラスへの参加に向けて多くの若手職員が採用されており、そのような若手職員が同世代の競争の中で貪欲に技術的知識を吸収し成長しようとしています。カンボジアの森林モニタリング体制構築に向けては、森林管理や参照レベルの設定に必要となる土地被覆に関するベースマップの作成や現地調査における技術の向上など、まだ多くの技術的課題が残されていますが、多忙な通常業務の中にもかかわらず2日半にわたるワークショップに一人も脱落せずに参加した様子を見て、未来のカンボジアの森林行政に明るい希望を見いだした気がしました。