国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 REDD研究開発センター

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FAO第14回世界林業会議

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FAO第14回世界林業会議

FAO第14回世界林業会議の概要報告

林野庁海外林業協力室 井上泰子  (REDDセンターだより 2015年度No.4 掲載)
1.概要

「世界林業会議」は、6年に一度開催される森林・林業に関する世界最大級の国際会議です。本年は、南アフリカ共和国・ダーバンにおいて2015年9月7日から11日の5日間に渡り、各国政府、国際機関、大学/研究機関、産業界、非政府組織(NGO)の関係者など、142カ国からおよそ3900名(約30名の森林担当大臣、副大臣を含む)が参加して開催されました。会合では、森林・林業・木材産業に関する幅広い議題について、社会・経済・環境等様々な切り口から議論が行われましたが、その中で、気候変動、REDD+に関連して行われた主な特別会合、イベント等について紹介します。

(写真1)世界林業会議オープニングプレナリー(出典:FAO webpage)

(1)国連気候変動枠組条約(UNFCCC)「資金に関する常設委員会(SCF)第3回フォーラム~森林資金の一貫性と調整の強化~」
 2013年に行われたUNFCCC第19回締約国会合(COP19、ポーランド・ワルシャワ開催)で採択された決定においては、REDD+の完全実施の推進に向けた資金に関する作業計画として、UNFCCCの「資金のための常設委員会」によりフォーラムを開催し、①結果ベースの活動に対する支払いに資金を提供するための方法と手段、②代替アプローチに対する財源の提供 について検討することとされています。この決定に基づき、UNFCCCは「世界林業会議」の特別会合として9月8日、9日の2日間に渡り本フォーラムを開催、各国のUNFCCCのREDD+交渉官を中心に約200名が参加しました。
 概要報告では、2006年から2013年までの間に、86億ドルを超える資金がREDD+の支援のために拠出されており、このうち、二国間が約40億ドル、多国間(FCPF、UNREDD等)が約33億ドル、民間(企業、NGO等)が約10億ドルとなっていること、ドナーについては主要5カ国(ノルウェイ、米国、独、日本、英国)で拠出の75%を占め、うちノルウェイが40%と突出するも21カ国から支援があり、受益国についてはブラジル、インド、インドネシア、中国、メキシコ、コンゴ民主共和国、ガーナ、ラオス、タンザニア、フィリピンが上位10カ国となっており、ブラジル、インド、インドネシア、中国、メキシコで全受益額の50%以上を占めるなどの分析結果が明らかにされました。このような結果から、資金が数カ国に集中しており、多くの国ではREDD+準備にとりかかったもののREDD+の結果に結びつく「実施」に必要な資金が不足していることが指摘されました。
 ブラジルからは、2014年の年間森林減少率が2004年に比して82.5%減少したとの報告があり、アマゾン・ファンドを活用し、違法伐採の取り締まりや、衛星画像によるモニタリングの強化、周辺のアマゾン地域林への南南協力の推進などが相乗効果を高めていることが報告されました。また、REDD+は非市場による資金メカニズムであるとの考えに基づき、資金が不足してインセンティブが失われないよう、新規で、追加的で、予測可能な貢献が求められることを主張しました。
 CPI、ブラジル、FAO、世界銀行、英国、CIFOR等から民間セクターの一般投資の役割の強化の重要性について指摘があり、単位土地面積当たりの収量の向上などによる効率的な土地利用もREDD+に貢献する等の発表がありました。二国間のドナーとして英国からは、2014年気候サミットでの森林のためのニューヨーク宣言の実施状況の報告、世銀のFCPFやBioCarbon Fundへの新たな拠出予定、ICAO(国際民間航空機関)がREDD+によるオフセット事業に関心を示していることなどが発表されました。独のGIZ(国際協力公社)からは、結果支払いのREM(早期実施プログラム)により、REDD+の5つの活動のうち森林減少の抑制を手始めにモニタリング結果を保守的に報告し、これを検証して支払いを実施するアプローチをブラジルでまず開始したと発表しました。
 我が国は第4セッション「森林と土地セクターにおける気候変動緩和と適応のために、どのように民間資金を動員し活用するか?」において、 JICAの五関審議役とインドネシア環境林業省Rusli氏が共同でプレゼンテーションを行い、五関審議役から昨年JICA地球環境部と森林総合研究所REDD+研究開発センターが共同で事務局を努める官民連携のREDD+プラットフォームを立ち上げ、68団体が既に参加していることを発表し、インドネシアからは二国間クレジット制度によるREDD+の実施方法について説明を行いました。質疑応答では、UNFCCCの枠組みにおける二国間クレジット制度の位置づけ等について等、多くの質問が寄せられました。

(写真2)資金のための常設委員会での発表

 このほか、GEF(地球環境ファシリティ)、GCF(緑の気候基金)、UNREDD、UNFF等から発表がありました。GCFのセッションでは特に活発な質疑応答が行われた他、結果支払いと、代替アプローチに分かれての3回のグループ討議も行われました。どのように支援と資金の機会を有効に活用し障害を克服すべきか、どのようなガイダンスが必要かについて議論が行われ、結果支払い、代替アプローチ共にこれまでのCOP決定をベースに対応することが重要との点については意見の一致が見られました。UNFCCCにREDD+の資金を調整するための組織の設置が必要との意見もありました。
 この会議の結果については事務局がとりまとめ、年末に開催されるCOP21に報告される予定です。議事次第やプレゼンテーション資料などは以下のページからダウンロードできます。
 
(2)特別イベント「森林と気候変動」
 9月10日、WFC会場において実施された森林と気候変動に関する特別イベントにおいては、パネルディスカッション形式で、①FAOへのEU大使、②World Resource Institute(WRI)、③メキシコ国家森林委員会、④ボリビア森林管理保全組合、⑤コンゴ共和国先住民団体、⑥NGOグリーン・ピース から代表者が登壇し、気候変動対策における森林の果たすべき役割について意見交換が行われました。500人を収容する会場は満席となり、パネルディスカッションの後多くのコメント・質問が行われるなど、関心の高さが伺われました。
 FAOへのEU大使からは、2020年までに世界の森林減少を半減することを目標に、これまでREDD+の支援に26億ドルを拠出してきたこと、民間企業の取組の拡大に期待していること、このためにはガバナンスの向上やステークホルダーの関与の増大が必要であることが述べられました。
 WRIからは、気候変動と森林の関係については、1990年には政治的にセンシティブであったが、2007年REDD+の推進が合意されてからは明確になったことを振り返り、まずはワルシャワREDD+枠組みに沿った結果支払いの仕組みを軌道に乗せることが重要であると述べました。
メキシコ森林委員会は、先住民のエンパワーにより森林保全を強化する政策をとっていること、補助金と施策のパッケージによる総合的な取り組みの強化により持続可能な森林経営の実現を図ることが可能であると述べました。
 ボリビアからは緩和と適応の共同アプローチ(JMA)について紹介があり、これに賛同するニカラグア、パラグアイ、ベネズエラ等のラテン・アメリカ各国も賛同し、取り組みを進めていることについて紹介がありました。 コンゴ先住民は、長期的な森林の保全には、先住民の知識を生かすこと、REDD+の取り組みについてはFPIC(事前の十分な周知による合意)が必要不可欠であることを主張しました。
 グリーン・ピースからは、気候変動の責任は先進国にあり、歴史的な排出の責任に応じて気候変動の資金の負担をすべきと指摘しつつ、資金があれば、森林は全世界の排出削減の5分の1をカバーしうると主張し先進国からの拠出を呼びかけました。
(3)サイドイベント「二国間クレジット制度によるREDD+の実践」(JICA主催)
 世界林業会議では、本会合や特別イベントに加え、数多くの公的機関や民間団体等がサイドイベントを開催しました。その中で、JICAは9月9日、我が国が提唱する二国間クレジット制度によるREDD+の実践をテーマにイベントを開催しました。
二国間クレジット制度は、日本政府が気候変動対策を様々なアプローチにより進めるための制度の一つとしてUNFCCCに提案したものであり、これまでに15カ国とそれぞれ二国間文書に署名し、民間企業による事業の実現可能性調査や実証事業などを進めてきています。また、エネルギー・工業分野では既にプロジェクトの登録が開始されています。
 2015年度については環境省の補助事業により、ラオスとインドネシアにおける焼畑による森林減少・劣化対策を目的としたREDD+の実証事業が行われることとなりました。
 本サイドイベントにおいては、林野庁井上より二国間クレジット制度の説明、JICA南部氏よりREDD+プラットフォームの説明を行うとともに、ラオスの実証事業を担当している日本森林技術協会の鈴木氏より事業の概要について発表し、ラオス林業省インタードン氏は本事業により期待される効果について発表しました。  約40名の参加があり、発表後活発なコメント・質疑応答が行われ、二国間クレジット制度によるREDD+の実施について関心の高さが伺われました。

(写真3)サイドイベント「二国間クレジット制度によるREDD+の実践」(JICA主催)

(4)成果文書「気候変動に関するメッセージ」
 会議の最終日に、気候変動に関するメッセージについて議論が行われ、成果文書として採択されました。まず、同日に採択されたダーバン宣言「森林・林業の2050年ビジョン」において、森林は気候変動の緩和及び適応の解決において重要な役割を果たしうることや、食料安全保障、生計向上、生物多様性の保全等の多面的機能を持つことなどが確認され、森林減少・劣化に由来する排出削減(REDD+)に関しては、森林が気候変動の緩和に貢献できる重要なメカニズムであり、このアプローチにおける有効性、協調、資金源の動員については、慎重な検討が求められる旨記述されています。
 更に提言として、①森林に依存するコミュニティや先住民族に特別な注意を払いつつ、気候変動に関係する政府や他の利害関係者の間での理解を促進させること、②現場での適応や緩和に関する既存の又は増大する経験や知識から利益を得るため、森林に依存するコミュニティや先住民族が完全に関与することを通じ、パーナトーシップや南南交流を促進すること、③気候変動に対処する上で政府やその他利害関係者にとっての課題や機会に対する理解を促進させるとともに、持続可能な開発のより幅広い文脈や、持続可能な開発目標の達成において、こうした課題に取り組むよう奨励すること、④政策決定者が政策決定を行うのを支援するとともに、森林・林業の実践者が気候変動の適応及び緩和による多様な目的を実現するのを助けるため、情報の入手可能性及びその質を継続して高めること、⑤多様な資金源をより連携して効果的に活用すること等により、気候変動の緩和及び適応に関する進捗の評価や情報提供を促進すること が挙げられました。詳しくは、以下リンク先をご参照下さい。
 
2.感想
 年末に行われるCOP21における気候変動対策の新たな枠組みの構築に向けて、議論が活発化しています。  SCFフォーラムの議論では、これまでのREDD+実現に向けた協力や、実施に向けた支援の取り組みについてアップデートされ、今後取り組みを進めていくに当たっての原則や課題が浮き彫りにされました。課題の一つとしては、REDD+については2010年COP16でのカンクン合意における決定に基づき、準備資金については先進国が支援すること、結果支払いが行われることが規定され、2013年のワルシャワREDD+枠組みで結果支払いの要件が定められたところですが、具体的にREDD+を実施するための資金の確保については誰がどう負担するのかについて規定がなく、途上国は自国の予算で実施するか、または二国間、多国間、民間等の支援を得て実施しなくてはなりません。
 多国間の取り組みについて、我が国も先日15億ドルを拠出したGCFにおいては、UNFCCCの枠組みによりCOP決定に基づくREDD+の結果支払いを実施するための枠組みが採択されましたが、実施を加速するためには、実施に必要な資金を事前に借り受けるシステムなどの必要な制度構築の加速化が望まれるところです。  我が国が提唱する二国間クレジット制度についても、今回の発表で多くの関心が寄せられましたが、ブラジル等市場メカニズムに反対する国もあり、今後もどのようにこれまでのCOP決定と整合しつつ2020年以降の枠組みの中で活用しうるか、引き続き丁寧な説明と交渉への対応が必要となっているところです。  引き続き、ご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

日程

平成27年9月7日(月)~9月11日(金)

場所

南アフリカ、ダーバン、国際会議センター

概要

FAOが6年に一度開催する世界最大の森林・林業イベントです。 今回のテーマは「Forests and People : Investing a Sustaibable Future」。その心は、森林への投資は人々への投資であり、ひいては持続可能な開発につながる、ということ。 社会経済開発と食糧安全保障、商品開発と持続可能な貿易、森林モニタリング、ガバナンス等の6つのサブテーマの下に、幅広い議論と情報交換が行われます。 5月30日までに申し込んだ参加者は参加費に割引が適用されます。

世界林業会議の概要について(林野庁のウェブサイト)

詳細サイト(リンク)

  

FAO_The XIV World Forestry Congress