REDDプラスの資金メカニズムとその活用
公開セミナー報告
2月3~4日の2日間、東京大学伊藤ホールにて、公開国際セミナー「REDD+の資金とその活用」を開催しました。セミナーには海外からの20名を含む国内外の約170名のご参加を頂き、REDD+活動や森林保全のための国際的な資金メカニズムに関する議論の動向について情報を共有するとともに、途上国各国におけるREDD+の結果ベース支払いに向けた国内体制整備や現場での実施における課題について議論を深めました。
- 開催日時
- ~
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- 会場
- 東京大学伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール
- 東京都文京区本郷 7-3-1
- 定員
- 両日とも約200名
- 使用言語
- 日本語・英語 (同時通訳)
- 主催
- 独立行政法人森林総合研究所
- 共催
- 独立行政法人国際協力機構(JICA)
- 国際熱帯木材機関(ITTO)
- 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
- 国際林業研究センター(CIFOR)
- 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所(RIHN)
趣旨
REDDプラスの資金メカニズムについては、2013年末に開催された気候変動枠組条約(UNFCCC)第19回締約国会合(COP19)で合意した「REDDプラスのためのワルシャワ枠組み」を受け、2014年末のCOP20リマ会合では、結果ベース支払いのための制度設計について今後の具体的な検討に向けた一歩を踏み出しました。
一方、UNFCCCの下での枠組み作りに向けた議論を支援する目的で、世銀は結果ベース支払いの試行としてのFCPFカーボンファンドの運用を開始し、2013年以降、既に数カ国が承認されました。このような多国間の枠組みづくりと並行し、二国間の支援による資金協力もREDDプラス活動の早期着手に大きな役割を果たし、インドネシア、ブラジル、アフリカコンゴ川流域等森林減少・劣化からの排出の大きな地域を中心に、資金協力、技術協力など様々な形での支援が行われています。我が国も二国間クレジット制度(JCM)の下でのREDDプラス活動の実施を目指して制度的な枠組みを整えつつあります。
また、REDDプラスホスト国や地方政府の中には、投資者である民間企業やNGOとの連携の下、VCS等の民間炭素クレジット認証スキームを活用し、パイロット的にプロジェクトに取り組む例も増えつつあります。そのようなプロジェクトレベルでの取組から得られた知見は国際的な制度設計に影響を及ぼすとともに、緊急性の高い地域でのアーリーアクションとして森林保全の実現につなげることが期待されていますが、一方でこのようなプロジェクトレベルでの取組は、準国レベルへのスケールアップやUNFCCCの下での枠組との整合性確保といった制度設計上の課題を抱えるとともに、プロジェクトへの投資者のインセンティブをどのように継続的に生み出していくかが課題となっています。
このように、REDDプラスのための資金メカニズムは、当初予想されたようなコンプライアンスマーケットを主体としたものから、多国間、二国間、市場、非市場を含む様々な資金や支援を組み合わせて実施する方向に向かいつつあり、多様な資金をどのように組み合わせ、活用していくか、また、制度の複雑化や重複をどのように避けるのか、が大きな課題となっています。一方、REDDプラス対象各国では、受け入れた国際資金をどのように活用し、森林減少・劣化の現場でドライバーに対処していくのかについて、国内における早急な体制整備と制度設計が求められています。
このような背景の下、本セミナーでは、REDDプラスの資金に関する最新の国際的な動向について情報共有を図るとともに、その今後の課題と展望について議論します。また、REDDプラス各国内における国際資金の効率的な管理・運用に向けた制度設計、既存の国内制度や公的支援との組み合わせによる効果的なドライバー対策等に関する知見を共有し、各国のREDDプラス推進による持続可能な森林経営の実現に向けた方策について議論します。
プログラムと発表ファイル
時 間 | 氏 名 | 所 属 | 内 容 | 報 告 |
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開会セッション | ||||
10:00 - 10:30 | 鈴木 和夫 | 森林総合研究所 理事長 | 開催挨拶 | 議事録 |
沖 修司 | 林野庁 次長 | 来賓挨拶 | 議事録 | |
松本 光朗 | 森林総合研究所 REDD研究開発センター長 | 開催趣旨説明 | 議事録 | |
基調講演: 気候変動に対処する資金メカニズム - その到達点と課題: REDD+ の観点から モデレーター 松本 光朗 (森林総合研究所) |
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10:30 - 11:20 | 高村 ゆかり | 名古屋大学 教授 | 気候変動に対処する資金メカニズム - その到達点と課題: REDD+の観点から | |
質疑応答 | ||||
セッション 2: REDD+のための国際資金メカニズム-準備段階から実施へ【テレビ会議】 モデレーター: 宮薗 浩樹 (国際協力機構) |
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11:20 - 12:40 | ||||
エリザ・バローディ | 世界銀行 【テレビ参加】 | 異なるタイプのREDDプラス資金の連携:森林炭素パートナーシップ基金と森林投資プログラムを中心として | 議事録 | |
タオ・ワン | 緑の気候基金 【テレビ参加】 | GCFの作業進捗状況 | 議事録 | |
質疑応答 | ||||
12:40 - 14:00 | 昼休み | |||
14:00 - 14:30 | マリア・ホセ・サンサンチェス | UN-REDD / 国連食糧農業機関 | 準備段階から実施へ - 多国間資金援助のあり方 | 議事録 |
質疑応答 | 議事録 | |||
セッション 3: REDD+資金の調達に向けた民間企業とNGOの役割 モデレーター: 山ノ下 麻木乃 (地球環境戦略研究機関) |
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14:30 - 16:00 | ||||
ピーター・グラハム | WWFインターナショナル | REDD+の資金におけるNGOの役割: 提言、連携、批判 | 議事録 | |
ガブリエル・エイコフ | フォレストカーボンパートナーズ | REDDプラスビジネスと環境ビジネスのドナー資金をつなぐ | 議事録 | |
松本 光朗 | 森林総合研究所 | REDDプラス方法論開発のためのJCMガイドラインの概要 | 議事録 | |
質疑応答 | 議事録 | |||
16:00 - 16:20 | コーヒーブレイク | |||
パネルディスカッション: REDD+のための国際資金スキームはどこへ向かうのか? モデレーター: マ ハンオク (国際熱帯木材機関) |
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16:20 - 17:20 | パネリスト: ・マリア・ホセ・サンサンチェス (UN-REDD/国連食糧農業機関) ・ピーター・グラハム (WWFインターナショナル) ・ガブリエル・エイコフ (フォレストカーボンパートナーズ) ・松本 光朗 (森林総合研究所) ・バンバン・スプリヤント (インドネシア環境・林業省) | 議事録 | 第一日まとめ | 17:20-17:30 | 松本 光朗 (森林総合研究所) |
17:30 | 閉会 | |||
18:00-20:00 | 懇親会(レストラン カポ・ペリカーノ) |
時 間 | 氏 名 | 所 属 | 内 容 | 報 告 |
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開会セッション | ||||
10:00 - 10:10 | 松本 光朗 | 森林総合研究所 REDD研究開発センター | 導入 | |
基調講演: REDDプラスの資金:論点と課題 モデレーター: 阿部 健一 (総合地球環境学研究所) |
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10:10 - 11:10 | ウィリアム・サンダリン | 国際林業研究センター 首席研究員 | インドネシアにおけるREDDプラス実施と国家森林政策の将来的展望 | 議事録 |
質疑応答 | 議事録 | |||
セッション 2: REDDプラス関連資金の管理と運用 モデレーター: 井上 泰子 (林野庁海外林業協力室) |
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11:10 - 13:00 | ||||
ヤオ・クエキー | ガーナ森林委員会 | ガーナにおけるREDDプラスの実施体制とガバナンス | 議事録 | |
久保 英之 | REDD+専門家、前国連食糧農業機関 | 二国間資金援助を越えて:インドネシアにおけるREDD+実施に向けた新しい仕組みづくり | 議事録 | |
アントニオ・フェレイラ・アウグスト・セラ | エンバイロトレード | ローカルレベルにおけるREDDプラスプロジェクトの資金管理 - コミュニティ・カーボンと貧困削減プロジェクトを事例として | 議事録 | |
ロマス・ガーバリアウスカス | コンサベーション・インターナショナル | 環境債務スワップの概要及び米国熱帯雨林保全法に基づく環境債務スワップのしくみ | 議事録 | |
質疑応答 | 議事録 | |||
13:00 - 14:00 | 昼休み | |||
セッション 3: 森林保全と持続可能な森林経営に向けた制度設計-環境サービス支払いから-モデレーター: マ ハンオク (国際熱帯木材機関) | 14:00 - 15:40 | |||
エクトル・アルセ・ベナビデス | コスタ・リカ環境省 | コスタリカの熱帯林における20年におよぶPES実施の経験から学ぶ | 議事録 | |
バンバン・スプリヤント | インドネシア環境・林業省 | コミュニティ主体の組織づくりから学ぶ - REDDプラス デモンストレーション活動 | 議事録 | |
パム・ホン・ルオン | ベトナム林業省 | ベトナムにおける森林環境サービス支払い | 議事録 | |
質疑応答 | 議事録 | 15:40 - 16:10 | コーヒーブレイク | |
パネルディスカッション: REDDプラス資金のアクセスと活用に向けた課題 モデレーター: 松本 光朗 (森林総合研究所) |
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16:10 - 17:20 | パネリスト: ・ウィリアム・サンダリン (国際林業研究センター) ・ヤオ・クエキー (ガーナ森林委員会) ・アントニオ・フェレイラ・アウグスト・セラ (エンバイロトレード) ・ロマス・ガーバリアウスカス (コンサベーション・インターナショナル) ・エクトル・アルセ・ベナビデス (コスタ・リカ環境省) ・パム・ホン・ルオン (ベトナム林業省) | 議事録 | ||
まとめ | ||||
17:20 - 17:30 | 松本 光朗 | 森林総合研究所 REDD研究開発センター | セミナー総括 | |
17:30 | 閉会 |