国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
REDDプラス・海外森林防災研究開発センター

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FAQ

REDDプラス(REDD+)とは

Q1: REDDプラスって何?

A1: REDDプラスとは、「地球温暖化を防ぐために、途上国の森を守ろう」とする取組みの一つです。

より詳しく解説すると、REDDプラスとは、『Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries(開発途上国における森林減少・劣化に由来する排出の抑制、並びに森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増強)』の英語の頭文字から作られた略語で、気候変動に関する国際連合枠組条約の下で検討されている、 途上国での森林分野の温室効果ガス排出削減努力等を評価しインセンティブを付与する仕組みのことです。

狭義では同条約の下での用語となっていますが、同様の考え方に基づく民間認証機関等による取り組みも広い意味でREDDプラス活動と呼ばれています。

Q2: 「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」って何?

A2: 「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」とは、REDDプラスの活動推進に向けて、民間企業・民間団体・政府機関・研究機関・関係省庁等を含めたオールジャパンで情報・経験を共有し、協働していくためのプラットフォームです。

加盟団体には、メーリングリストや勉強会などを通じて国際社会の気候変動交渉やREDDプラスの制度構築、新しいビジネスモデルなどの情報がタイムリーに入手可能となる、森林保全活動を応援しているというプラスイメージ. が生まれる、などのメリットが得られます。また、プラットフォームに加盟すると、「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」ロゴ、バナーの使用が可能です。

「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」について(外部サイト)

REDDプラスと民間企業

Q3: 日本からはREDDプラスにどのような企業や団体が関わっているの?

A3: 日本の企業や団体では、国際協力機構(JICA)などの国際協力活動に関わる政府機関・団体、森林の計測技術に関する企業、途上国の森林保全活動に関心を持つ企業、温暖化対策によるビジネスモデル形成に関心を持つ企業等、幅広い企業や団体が関わっています。それらの企業や団体の多くが「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」に加盟しています。

REDDプラスと研究(森林炭素蓄積量モニタリング)

Q4: REDDプラスで森林からの温室効果ガス排出削減量はどうやって測るの?

A4: 気候変動に関する国連枠組条約の合意では、REDDプラス活動による温室効果ガス排出削減量は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(注)が示す最新のガイダンスやガイドラインに基づいて計算することが求められています。IPCCが2006年に公表した最新のガイドラインでは、森林炭素蓄積量の変化量(=排出量および吸収量)の推定方法にはデフォルト(gain-loss method)と蓄積変化法(stock-change method または stock difference method)の 2つが示されています。「デフォルト法」では、森林の炭素蓄積の増加量及び減少量を推定し、それらを足し合わせて全体の変化量を推定します。たとえば、樹木の成長による増加、枯死や伐採などよる減少、森林から他の土地利用またはその逆の転用による増減などを積算していきます。伐採量や撹乱による減少量の把握する必要があるデフォルト法ですが、途上国では多くの場合それらを把握するための正確な統計情報が限られているのが実情です。

一方で、「蓄積変化法」は、異なる時点の炭素蓄積量の差分から変化量を求める手法です。気候変動枠組条約(UNFCCC)では、国家レベルの炭素蓄積変化量を把握する手法として、リモートセンシングと現地調査の組み合わせを推奨しています。REDDプラス クックブックでは、蓄積変化法による測定手法を詳しく解説していますので、参照してみてください。

(注)IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、1988年にWMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)のもとに設立された組織であり、195か国・地域が参加しています。気候変動に関する最新の科学的知見(出版された文献)についてとりまとめた報告書を作成し、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的としています。

Q5: MRVとは?

A5: REDDプラスの活動では、温室効果ガスの排出削減量の正しい計測(Measuring)、報告(Reporting)、および検証(Verifying)が求められます。これら3つの項目の英語表記の頭文字を取ったのが、MRVです。「計測」は森林からの温室効果ガスの排出量・吸収量を継続的に計測してデータを収集することを指します。REDDプラスでは、二酸化炭素が計測の中心となりますが、メタンや亜酸化窒素などの温室効果ガスも対象となります。「報告」は報告先となる機関などが求める情報を提供することで、透明性や正確性、完全性などの要件が求められています。「検証」は、報告された内容を客観的にチェックし、規定の要求事項が満たされているか確認する作業であり、第三者機関による実施が要求されることもあります。

Q6: アロメトリ式とは何?

A6: REDDプラスの実施にあたり、「蓄積変化法」を使用して温室効果ガスの排出削減量を測定するためには、単位面積あたりの森林炭素蓄積量(排出係数とも言う)を求め、これに面積を乗じて総蓄積量を算出します。その際、まず、面積あたりの樹木の重量を把握する必要があります。樹木には直径と重量の間に成立する関係があり、これをアロメトリと呼んでいます。このアロメトリを利用して、各樹木個体の直径や樹高から個体重量(葉、枝、幹の総量)を算出し、単位面積当たりの樹木の本数を乗ずることで、単位面積当たりの樹木の重量を求めます。どのアロメトリ式を選択するかで森林炭素蓄積量の計算結果も異なるため、対象地あるいはその周辺で開発されたアロメトリ式を適用するのが望ましいのですが、既存の研究成果等から適切な式が見つかるとは限りません。そのような場合には、熱帯林広域で使用できる一般式を使います。

REDDプラスの実施国や地域に適応可能な独自のアロメトリ式の開発は、森林炭素蓄積量の推定精度の向上に大きく貢献しうるものです。「REDDプラス クックブック アネックス第二巻」では、アロメトリ式作成に必要な調査の一般的な手順を示しています。また、測定に手間がかかるため、事例の少ない根の重量測定に関しても、より簡便に計測できる方法を解説しています。

REDDプラスと研究(セーフガード)

Q7: REDDプラス活動におけるセーフガードって何?

A7: REDDプラス セーフガードとは、REDDプラス活動の実施に伴い発生することが懸念される社会や環境への負の影響や、REDDプラス活動の効果を損なうリスクを回避するために求められている、温室効果ガスの排出削減・吸収増加以外の配慮事項の総称です。以下の3つに大別されます。

  1. ガバナンス: 透明かつ効果的な森林の管理・統治体制を整備します。体制の整備にあたっては、国際合意や実施国の法令、制度、主権、国家森林プログラム等に配慮する必要があります。
  2. 環境:天然林を転換せず保護・保全し、また生態系サービスに関するインセンティブを付与し、さらに社会・環境的利益の増強となるような行動を促進・支援します。
  3. 社会:先住民や地域住民の知見や権利を尊重し、活動実施による利益の公平な配分を行います。

セーフガード配慮事項は、メキシコで開催された国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)決定(カンクン合意)において合意された7つの項目で構成されています。REDD研究開発センターではわかりやすいガイドブックや和英事例集を出版していますのでご参照ください。

REDD-plus COOKBOOK ANNEX 調査マニュアルVol. 3 社会セーフガード解説  (日本語版)  (英語版

REDD+のためのセーフガード・ガイドブック

REDD+のためのセーフガード事例集 2015

REDD+ Safeguard Approaches 2014 (英語版事例集)

Q8: REDDプラス活動によるリスクや負の影響とは何?

A8: REDDプラス活動は、発展途上国の森林を保全することにより、地球規模の温室効果ガス排出の削減を目的に実施するものです。しかし、発展途上国の森林は、地球規模の気候変動に関わる温室効果ガスの排出源・吸収源であるだけではなく、同時に、生物多様性保全、先住民の生活の場、地域住民の生活資源の調達など、様々な役割を担っています。このため、温室効果ガス排出削減だけに注目してREDDプラス活動を実施すると、その状況や実施方法によっては、生物多様性の損失や先住民・地域住民の森林へのアクセスの制限など、社会や環境に対する負の影響が発生するおそれがあります。また、REDDプラス活動としてある範囲の森林を一定期間保全したとしても、事業終了後に伐採されてしまったり、別の森林での伐採を加速してしまったりということが起こりうるため、目的とする排出削減活動の効果が損なわれるリスクが懸念されます。このような負の影響やリスクに対しては、事前にリスク評価を行い対処するとともに、活動期間においても十分な配慮が必要です。