森林総合研究所が COP22 で主催した公式サイドイベントが、持続可能性に配慮したとして評価されました
国連気候変動枠組条約事務局は、会議の「グリーン化」を促進するために、公式サイドイベント主催者には関連資料を紙媒体ではなく電子データのみで配布することを強く推奨しています。
森林総合研究所 REDD 研究開発センターは、COP22 で開催した公式サイドイベント(開催報告の頁参照)にて資料配布を避け、展示ブースにおいても Cookbook をサンプル版のみを設置する等など、紙の使用を必要最小限にとどめました。
この結果、同サイドイベントは、持続可能性レベルが最も高い green (グリー ン) 評価を受けました。詳細は国連気候変動枠組条約事務局のこちらのページにてご覧になれます。
(参考:評価区分について)
サイドイベントの評価は次の三つの区分で行われています。
・Green: electronic dissemination of materials only
・Orange: limited number of printed materials combined with electronic dissemination
・Red: a lot of leftover printed materials
結果に基づく支払いを可能にする
: 熱帯林でのREDD+参照レベル設定から得られた教訓
: 熱帯林でのREDD+参照レベル設定から得られた教訓
開催報告
日時 : 平成28年11月17日(木)15:30~(モロッコ現地時間)
場所 : Bering (Observer room 10 、COP22 Green Zone 内)
趣旨説明・司会進行 : 国際熱帯木材機関(ITTO)Hwan-Ok Ma博士
現在、多くの途上国は、気候変動枠組条約(以下、UNFCCC)のパリ協定の下での「自国が決定する貢献(NDC:nationally determined contribution)」を達成するために、気候変動緩和策を検討・実施しています。中でも、熱帯林を有する途上国は、森林減少・劣化に由来する排出の削減等(以降, REDD+)を重要な緩和策の一つと位置づけています。
UNFCCCの下では、森林減少・劣化に由来する排出の削減や森林施業の改善・植林等による炭素蓄積の増強等の「結果」に対してインセンティブが支払われることになりますが、その条件のひとつとして、途上国には自国の森林参照排出レベル/森林参照レベル(FREL/FRL: Forest Reference Emission Level/Forest Reference Level, 以下, 参照レベル)を設定し、UNFCCCによる技術的審査を受けることが求められています。これまで、既に複数の途上国が参照レベルをUNFCCCへ提出しており、現在その審査が進行中です。
このような中、2016年11月7日からの2週間、UNFCCC第22回締約国会議(COP22)及び関連会合がモロッコ王国のマラケシュで開催されました。現地ではCOP22公式会合と並行し、関係機関等による数多くの公式サイドイベントが開催されました。そこで、森林総合研究所REDD研究開発センターも、国際熱帯木材機関(ITTO)と共催で、11月17日(木)に公式サイドイベント「結果に基づく支払いを可能にする:熱帯林でのREDD+参照レベル設定から得られた教訓」を開催しました。
開会挨拶 : 沖修司林野庁次長
はじめに、林野庁の沖修司次長から開会の挨拶がありました。パリ協定にて重要な緩和策の一つであるREDD+について、その結果に基づく支払いのために必要な参照レベルは、国、準国及びプロジェクトの各レベル間での一貫性を保つことの重要性が強調されるとともに、REDD+の実施のため、日本は途上国への技術移転や人材育成等の支援を継続していく意向が示されました。
基調講演 : María Jose Sanchez博士
基調講演として、Basque Centre for Climate ChangeのDr. María Jose Sanchezより参照レベルを提出したREDD+実施国に関する発表がありました。既に提出された計15カ国の参照レベルが対象とする活動、スコープ、参照期間、プール、設定アプローチについての概要と分析が発表され、これら参照レベルの審査プロセスをご経験されての教訓と示唆が挙げられました。とくに審査プロセスで透明性を確保することの重要性が強調されました。また、参照レベル開発担当、温室効果ガスインベントリ担当、そして森林モニタリングシステム担当者/チーム間で異なる森林定義や層化スキームを用いてしまうことにより、測定・報告・検証(MRV)の実施に支障が出るといった課題が示され、各担当者/チームの継続的なコミュニケーションと一貫性を高める努力の必要性が教訓として示されました。
パネルディスカッション(5名)
次に、5名のパネルスピーカーから短い発表がありました。
まず、当所の平田泰雅REDD研究開発センター長から、REDD+の「森林減少」以外の要素についての排出係数の取り方について問題提起があり、とくにREDD+の5つのコンポーネントにおいても地域や森林の状態によって炭素蓄積量の幅が比較的大きく異なる「森林劣化」に対する実施可能なMRVについての考慮が参照レベルの設定には不可欠である点が強調されました。
インドネシア共和国環境林業省REDD+部長のNovia Widyaningtyas氏からは気候変動枠組条約事務局に提出済の参照レベルについての概要の説明がありました。参照レベル設定においては、明確さ、透明性、正確さ、完全性、そして一貫性の考慮や、準国レベルでの実施を経てのREDD+の完全実施に向けた科学的かつ実施可能の考慮が必要であること、そして多くの州の間での公平性と政策との一貫性の課題にも注意しなければならない旨の発表がありました。
マレーシア森林研究所のElizabeth Philip博士からは、予算上の制約の中で持続可能な森林経営を進めなければならないことから、参照レベル設定に関する情報収集にはどのような情報が真に必要なのかを十分に判断した上で、既存のシステムの上で費用対効果の高い収集が求められること、インドネシアと同様に準国政府との関係性を考慮しなければならないという課題、参照レベルの信頼性を担保するためにREDD+セーフガードを国情に合った形で適用することの難しさと重要性が強調されました。
カンボジア王国環境省MRV/参照レベル技術チーム次長のChivin Leng氏およびガーナ共和国国家REDD+事務局のKwame Agyeti氏からは、それぞれUNFCCC事務局へ提出間近の国レベルの参照レベルについて、用いる森林定義、対象となる活動やプール、今後の計画について発表がありました。カンボジアでは、国家REDD+戦略が間もなく公表・開始されるだけでなく、参照レベルの提出とその審査も行われることになることから、カンボジアにとって2017年は非常に重要な年になることが示されました。
ガーナでの設定プロセスから得られた教訓としては、参照レベル設定には技術面だけでなく政治的な側面も含まれるため、同プロセスを成功裏に進めるには中央政府の理解が不可欠であること、先行する世界銀行炭素基金のスキームでの準国レベルの参照レベル設定で得られた技術・知見を、国内の人材がしっかりと引き継ぎ他の地域へ拡張する必要があること、そして、多様なステークホルダーを巻き込んだ森林の定義についての判断の必要性が強調されたました。
質疑応答セッション
最後の質疑応答セッションでは、会場との活発な意見交換が行われました。各国政府の交渉官、国際機関、研究機関、大学関係者、NGO、コンサルタント等、様々な分野から80名程の参加がありました。
* 関連YouTubeサイトへ
結果に基づく支払いを可能にする
: 熱帯林でのREDD+参照レベル設定から得られた教訓
: 熱帯林でのREDD+参照レベル設定から得られた教訓
日時
2016年11月17日(木) 15:00~16:30
場所
モロッコ王国、マラケシュ (オブザーバールーム10,Bab lghli)
概要
COP22公式会合と並行し、関係機関等による数多くのサイドイベントや展示が開催されます。森林総合研究所REDD研究開発センターも、11月17日(木)15:00~16:30 国際熱帯木材機関(ITTO)等と共催でサイドイベント「結果に基づく支払いを可能にする : 熱帯林でのREDD+参照レベル設定から得られた教訓」を開催します。
プログラム
モデレーター: Dr. Hwan-ok Ma (国際熱帯木材機関 (ITTO))
・ 開会挨拶: 沖 修司 (林野庁次長)
・ 基調講演: Dr. María Jose Sanchez (Scientific Director, Basque Centre for Climate Change, スペイン王国)
・ パネルディスカッション
- 平田 泰雅 (国立研究開発法人森林総合研究所(FFPRI)REDD研究開発センター長)
- Ms. Novia Widyaningtyas (インドネシア共和国、環境林業省)
- Dr. Elizabeth Philip (マレーシア、森林研究所)
- Mr. Chivin LENG (カンボジア王国、 環境省)
- Mr. Kwame Agyeti (ガーナ共和国、国家REDD+事務局)
・ ディスカッション
連絡先
・ 森林総合研究所 : Dr. Yasumasa Hirata (平田 泰雅) climate@ffpri.affrc.go.jp
・ 国際熱帯木材機関 : Dr. Hwan-ok Ma ma@itto.int