生態系に配慮したアプローチによるREDDプラスの実施
開催報告
本サイドイベントでは、生態系ベースアプローチを活用した、途上国の森林減少・劣化に由来する排出削減策(REDDプラス)の多様な環境・社会的な便益を創出するための方法について、学術分野、民間セクター、援助機関の視点から発表およびパネルディスカッションが行われた。
日本の林野庁の本郷浩二次長のオープニングスピーチから始まり、国際林業研究センターのクリストファー・マルティウス博士は「REDDプラスは生態系機能、生態系サービス、生計に貢献できるのか(Can REDD+ contribute to ecological functions, ecosystem services and livelihoods beyond carbon?)」という題目で、生態系ベースの緩和と適応の統合的なランドスケープアプローチの必要性とそのための政策的な課題などについて発表した。
森林研究・整備機構森林総合研究所の佐藤保博士は、「ランドスペアリングまたはランドシェアリング:森林ランドスケープにおける炭素ストックと生物多様性保全(Land sparing or land sharing: Carbon stock and biodiversity conservation in forest landscape)」と題して、ランドスペアリングに関するREDD+への緩和と生物多様性保全への効果について科学的な議論について説明した。
国際協力機構の中田博氏は、「カンボジアの生態系ベースランドスケープアプローチ(Ecosystem-based Landscape Approaches- Cambodia)」について、カンボジア東部のセイマ保護林のREDD+プロジェクトでの生物多様性にも配慮した取り組みについて紹介した。
兼松株式会社の矢崎慎介氏は、「ゴロンタロの持続可能なカカオベースのアグロフォレストリー開発(Sustainable Cacao-based Agroforestry Development to Support Green Growth in Gorontalo)」と題し、社会林業の中での持続可能なカカオ供給の開発と、カカオプランテーションの非生産性の改善に関する活動を通じた、インドネシアのゴロンタロ州での地域住民の生計向上に貢献するREDD+実施の紹介を行った。
慶應義塾大学・北カリマンタン州政府のリナ・スサンティ氏は、「北カリマンタンのダヤック民族の伝統的生態系知識と将来のREDDプラス実施(Traditional ecological knowledge of the Dayak people in North Kalimantan and REDD-Plus implementation in the future)」について、北カリマンタンの医療用植物の活用や伝統的な農業などの伝統的生態系知識のREDDプラス実施への活用の可能性について発表した。
パネルディスカッションにおいては、持続可能な熱帯農村社会の構築・維持を可能とするREDDプラスの取り組みを推進するために必要な森林生態系の保全をどのように実現していくかというテーマの下、REDDプラスや生態系ベースアプローチに関わるステイクホルダー間の調整に関する課題、違法伐採監視の地域住民の参画、プランテーションの拡大のもたらす森林への影響、地域住民のREDDプラスへの参画+に関して活発な議論が行われた。
プレゼンテーション資料(pdfファイル)はこちら
・Dr. Christopher Martius Center for International Forestry Research (CIFOR) (2.8Mb)
・佐藤保 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 (0.5Mb)
・中田博 独立行政法人 国際協力機構(JICA)(Dr. Tom Evans, Wildlife Conservation Society(WCS)) (2.7Mb)
・矢崎慎介 兼松株式会社 (1.4Mb)
・Ms. Rina Susanti 慶応大学/Industry, Trade and SME Agency of North Kalimantan Province, Indonesia (1.8Mb)
生態系に配慮したアプローチによるREDDプラスの実施
日時
2018年12月13日(木曜日) 13:15-14:30
場所
ポーランド・カトウィチェ市 COP24 ジャパン・パビリオン
概要
REDDプラスの実施は、生態系機能の保全・改善の促進によるステークホルダーの生計向上、持続可能な資源管理、健康等の便益に資する手段となりうる。このサイドイベントにおいては、生態系に配慮したアプローチをとることにより期待される効果に焦点を当て、いかに地域の複雑な環境に対応したよりよいREDDプラスや土地利用の計画をたてるかについて議論を深める。
プログラム(敬称略)
モデレーター:森田香菜子((国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所)
開会挨拶:本郷浩二(林野庁次長)
プレゼンター:
・Dr. Christopher Martius, Center for International Forestry Research (CIFOR)
・佐藤保,(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
・中田博,独立行政法人 国際協力機構(JICA)(Dr. Tom Evans, Wildlife Conservation Society(WCS))
・矢崎慎介,兼松株式会社
・Ms. Rina Susanti, 慶応大学/Industry, Trade and SME Agency of North Kalimantan Province, Indonesia
パネルディスカッション
テーマ:持続可能な熱帯農村社会の構築・維持を可能とするREDD+の取り組みを推進するために必要な森林生態系の保全をどのように実現していくかについて議論する。
開催団体
主催:(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
共催:Center for International Forestry Research (CIFOR)
連絡先
(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所:森田香菜子,climate@ffpri.affrc.go.jp