平成30年度国際セミナー
「REDDプラスはどこまで来たか? 機会を活かすために」
「REDDプラスはどこまで来たか? 機会を活かすために」
開催日:2019年2月6日(水曜日) 10:00-17:30 (09:30 開場)
会場:東京大学 伊藤謝恩ホール(東京都文京区本郷7-3-1)
主催:国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
共催:国際熱帯木材機関(ITTO)、独立行政法人国際協力機構(JICA)、森から世界を変えるREDD+プラットフォーム
後援:林野庁、外務省、経済産業省、環境省、日本リモートセンシング学会、日本森林学会、日本熱帯生態学会、森林計画学会
概要
本セミナーは、技術面と施策面・資金面においてREDDプラスの実施に向けた発展の歴史と最新の状況を概観し、民間セクターを含む様々なステークホルダーによるREDDプラスのさらなるポテンシャルを議論する機会を提供することを目的として開催され、関係者を含め166名が参加しました。
REDDプラスに関し重要な活動を行ってこられた2名の方に基調講演をしていただきました。最初に世界資源研究所(WRI)のフランセス・セイモア名誉上席研究員より、グローバルな視座から「なぜ森林なのか?なぜ今なのか? REDDプラスの科学・経済学・政治学の最新動向」と題したご講演をいただき、森林減少は温室効果ガス排出要因の8パーセント程度である一方、緩和策として果たしうるポテンシャルは24~30パーセントあり、貧困削減など国連持続可能な開発目標(SDGs)達成において期待される役割も大きく、REDDプラス実施国と先進国・企業による支援の取り組みが必要とされているとのお話しがありました。
続きましてREDDプラス実施国のフロントランナー国の一つであるインドネシア環境林業省気候変動総局のルアンダ・アグン・スガルディマン博士より、「インドネシアにおけるREDDプラスの歴史と大きな機会」と題したご講演をいただき、REDDプラス国家戦略、森林参照レベル、森林モニタリングシステム、セーフガード情報システム、登録簿や実施規則などが進められている状況について報告がありました。
セッション1『REDDプラスはモニタリングやセーフガードに関する技術についてどこまで来たか』では、まずマリーク・サンドケル博士より「UNFCCCへ提出済みの森林参照レベルとREDD+の成果」と題し、すでに44か国のREDDプラス実施国からの森林参照レベルの提出があり、7か国から成果情報の提出があった状況とその傾向について説明がありました。また、モザンビーク森林局のジョアキム・マクアクア課長より「モザンビークにおける森林モニタリング手法の発展と森林劣化の問題への取り組み」と題した発表があり、JICA、JAXAとの技術協力により森林モニタリング体制整備が進んできたこと、森林劣化のモニタリングについても現地調査を基本とし、ドローンの利用などにより技術開発が進められていることについて報告がありました。続けて英国スティアリング大学のアナリサ・サヴァレシ博士より「REDDプラスの実現にむけてーセーフガードの意義」と題して、REDD+のセーフガードへの取り組みを通じた住民への便益分配や、支援側へのインセンティブの補強がさらに必要な状況であることが報告されました。
さらにセッション2『REDDプラスは施策面・資金面でどこまで来たか』においては、ゲハルト・ディタレーITTO事務局長より、「REDDプラスの効果的な戦略として生産林を活かす―世界の木材需要に応える方法とは―」についてご講演いただき、木材供給チェーンに着目し、持続性を確保するための取り組みの重要性について報告がありました。また、金融庁の池田賢志国際室長より「気候に関連した財務情報開示タスクフォース(TCFD)、物理的リスク、そして自然資本」と題したご講演をいただき、森林を含む自然資本に対する企業の取り組みに関する情報開示は、森林減少・劣化の抑制等の気候変動対策の推進に資するインセンティブとなる可能性について報告がありました。最後に国際金融公社(IFC)の奥村澄氏より「革新的ファイナンス:民間資金をREDD+に導入する手法」と題したご講演をいただき、IFC森林債(Forest Bonds)についてご紹介いただき、森林破壊進行を半減させるには750億ドルから3千億ドルの資金が今後10年に必要な状況にある一方、投資は促進されていない状況において、このIFC森林債は2016年10月に総額1億5千2百万ドルの5年債券として発行することを通じて投資を促進し、これは投資家からそれ以上の応募がありすぐに完売し、さらなる発行を計画していること、世銀FCPFのER(排出削減クレジット)の買い上げなどを行い、またIFCは実施に必要なローンの提供なども行っていることが説明されました。
最後にパネルディスカッション『本格実施のステージへ向けたREDDプラスの課題と機会』が行われ、「どのような技術面での課題が残されているのか? (どのように対処できるのか)」「どのような政策面での課題が残されているのか? (どのように対処できるのか)」「現在、どのような具体的チャンス/機会があるのか?(どのようにそれらを活用できるのか)」の3つのカギとなる質問について活発な議論が行われました。
最後に、インドネシアのルアンダ気候変動総局長からは。REDDプラスの取り組みを通じて様々な技術的な進歩があり、とりわけ森林をモニタリングする技術の向上は管理能力の向上に資するものになってきたが、GCFなどがモメンタムを低下させないよう機能することが重要であること、インドネシアでは2014年から2017年までのREDDプラス活動で二酸化炭素排出量削減を実現し、5億米ドルの支払いをGCFに申請する段階に来ていることを挙げたことを指摘し、世界資源研究所のセイモア名誉上席研究員からは、気候変動対策・資金における先進国の果たすべき役割の重要性と共に、COP決定に則った国・準国における取組が進められるべきこと、国際航空機関(ICAO)が進めることにより予測される大きな炭素市場に対処する準備が必要であることなどが指摘され、先進国にも途上国にも、積み残しの課題があり、REDDプラス実施のための必要な制度が構築されてはじめて、様々な取引が可能となる。短期的に必要なことは、REDDプラスやその成果支払い制度の重要性を政治的リーダーが認識することであることを指摘しました。
閉会セッションでは、森林総合研究所のREDD研究開発センターの平田泰雅センター長が、森林減少劣化がなお進行している途上国もあり、パリ協定やSDGsにおける森林に関する目標を達成するため、本セミナーを今後我々のとるべき行動は何かを改めて考えていく契機とすることへの期待を述べました。
平成30年度国際セミナー
「REDDプラスはどこまで来たか? 機会を活かすために」
「REDDプラスはどこまで来たか? 機会を活かすために」
開催日と会場
2019年2月6日(水曜日) 10:00-17:30 (09:30 開場)
東京大学 伊藤謝恩ホール(東京都文京区本郷7-3-1)
開催趣旨
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)におけるREDDプラスについて、パリ協定の発効をもって、各国が実施の努力を開始しています。REDDプラスの実施体制をより強化するためには、技術的観点と政策的・資金的観点からREDDプラスのポテンシャルを明らかにすることが求められます。
REDDプラスにおける技術的・制度的な課題は、地域の実情に合わせた低コストな森林減少のモニタリング手法の開発や、各国の参照レベルの設定、セーフガード情報システムにむけたセーフガードガイドラインの開発によって克服されつつあります。
また、政策的・資金的観点からも進展が見られます。例えば、森林減少の主要因の一つである違法伐採について、多くの途上国で対策が試行されています。また、REDDプラスを支援する様々なファンドや資金メカニズムが提供されています。これら公的資金に加えて、SDGs支援にも資するCSR活動として気候変動の緩和・適応への取り組みが進められ、民間資金の動員が期待されています。
本セミナーは、技術的観点と政策的・資金的観点からREDDプラスの実施に向けた発展の歴史と最新のトレンドを振り返り、民間セクターを含む様々なステークホルダーによるREDDプラスのさらなるポテンシャルを議論する機会を提供します。
※参加の事前申込みは締め切りましたが、当日参加は可能です。
※案内チラシは こちら からダウンロードできます。(1.3Mb)
※参加者アンケートは こちら からお願いいたします。
プログラム(敬称略)
基調講演1:なぜ今、森林保全なのか?REDDプラスの科学・経済学・政治学の最新動向
フランセス・セイモア(世界資源研究所(WRI))
基調講演2:インドネシアのREDDプラス実施体制:進捗と展望
ルアンダ・アグン・スガルディマン(インドネシア環境林業省気候変動総局)
セッション1:REDDプラスは技術面でどこまできたか
マリエケ・サンドケル(国連食糧農業機関(FAO))
ジョアキム・アーマンド・マクアクア(モザンビーク土地・環境・地域開発省森林局)
アナリサ・サバレシ(英国スティアリング大学)
セッション2:REDDプラスは施策面・資金面でどこまで来たか
ゲァハート・ディタレ(国際熱帯木材機関(ITTO))
池田賢志(金融庁(FSA))
奥村 澄(国際金融公社(IFC))
パネルディスカッション:本格実施のステージへ向けたREDDプラスの課題と機会-どこにいるのか、何をすべきか
フランセス・セイモア ルアンダ・アグン・スガルディマン
マリエケ・サンドケル ジョアキム・アーマンド・マクアクア
アナリサ・サバレシ ゲァハート・ディタレ
池田賢志 奥村 澄
平成30年度国際セミナー
「REDDプラスはどこまで来たか? 機会を活かすために」
時間 | 氏名 | 所属 | プログラム | 報告 |
---|---|---|---|---|
10:00 | 開会セッション | |||
10:00 - 10:20 | 沢田 治雄 | 森林総合研究所 所長 | 開催挨拶 | 議事録 |
織田 央 | 林野庁 森林整備部長 | 来賓挨拶 | 議事録 | |
井上 泰子 | 森林総合研究所 | 開催趣旨説明 | 議事録 | |
10:20 - 11:50 | 基調講演1 : なぜ森林なのか? なぜ今なのか? REDDプラスの科学・経済学・政治学の最新動向 | |||
フランセス・セイモア | 世界資源研究所(WRI)名誉上級研究員 | なぜ森林なのか? なぜ今なのか? REDDプラスの科学・経済学・政治学の最新動向 | 議事録 | |
基調講演2 : インドネシアにおけるREDDプラスの歴史と大きな機会 | ||||
ルアンダ・アグン・スガルディマン | インドネシア環境林業省気候変動総局 総局長 | インドネシアにおけるREDDプラスの歴史と大きな機会 | 議事録 | |
質疑応答 | ||||
11:50 - 13:00 | 昼休み | |||
13:00 - 14:15 | セッション1 : REDDプラスはモニタリングやセーフガードに関する技術についてどこまで来たか | |||
モデレーター : 佐藤 保 (森林総合研究所) |
冒頭説明 | |||
マリーク・サンドケル | 国際連合食糧農業機関(FAO) | UNFCCCへ提出済みの森林参照レベルとREDD+の成果 | 議事録 | |
ジョアキム・アーマンド・マクアクア | モザンビーク土地・環境・農村開発省森林総局 | モザンビークにおける森林モニタリング手法の発展と森林劣化の問題への取り組み | 議事録 | アナリサ・サバレシ | 英国スティアリング大学 | REDDプラスの実現にむけてーセーフガードの意義ー | 議事録 |
質疑応答 | ||||
14:15 - 15:30 | セッション2 : REDDプラスは施策面・資金面でどこまで来たか) | |||
モデレーター : 森田 香菜子 (森林総合研究所) |
冒頭説明 | |||
ゲルハルト・ディタレー | 国際熱帯木材機関(ITTO)事務局長 | REDDプラスの効果的な戦略として生産林を活かすー世界の木材需要に応える方法とはー | 議事録 | |
池田 賢志 | 金融庁総合政策局総務課国際室長 | 気候に関連した財務情報開示タスクフォース(TCFD)、物理的リスク、そして自然資本 | 議事録 | |
奥村 澄 | 国際金融公社(IFC) | 革新的ファイナンス:民間資金をREDD+に導入する手法 | 議事録 | |
質疑応答 | ||||
15:30 - 15:50 | コーヒーブレイク&ポスターセッション | |||
15:50 - 17:20 | パネルディスカッション : 本格実施のステージへ向けたREDDプラスの課題と機会 | |||
モデレーター : 江原 誠 (森林総合研究所) |
冒頭説明 | |||
パネリスト :
- フランセス・セイモア(世界資源研究所(WRI)) - ルアンダ・アグン・スガルディマン(インドネシア環境林業省気候変動総局) - マリーク・サンドケル(国連食糧農業機関(FAO)) - ジョアキム・アーマンド・マクアクア(モザンビーク土地・環境・地域開発省森林局) - アナリサ・サバレシ(スティアリング大学) - ゲルハルト・ディタレー(国際熱帯木材機関(ITTO)) - 池田 賢志(金融庁) - 奥村 澄(国際金融公社(IFC)) | 議事録 | |||
17:00 - 17:15 | まとめ 閉会 平田 泰雅 (森林総合研究所 REDD研究開発センター長) |
議事録 |