論文
Variation in tree community composition and carbon stock under natural and human disturbances in Andean forests, Peru, Forests 9: 390; doi:10.3390/f9070390
(ペルー、アンデスの森林における自然撹乱・人為撹乱影響下の樹木群集組成および炭素蓄積の変異)
リンク先
http://www.mdpi.com/1999-4907/9/7/390
著者
Kazuki Miyamoto(宮本和樹)・Tamotsu Sato(佐藤保)・Edgar Alexs Arana Olivos・Gabriel Clostre Orellana・Christian Marcel Rohner Stornaiuolo(ペルー農業省森林野生動物庁 SERFOR)
概要
南米、アンデスの森林における森林減少や森林劣化は、標高の違いや人為撹乱といった様々な自然環境・社会環境の影響を受けていると考えられます。樹木の群集組成は森林劣化の指標として注目されていますが、アンデスの山地のように標高差が大きい地域において、樹木群集組成の違いにどのような要因が影響を及ぼしているのか十分な知見が得られていません。
そこで本研究では、ペルーの上部熱帯林からアンデスの山地林にかけて様々な標高で地上多点調査を行い、標高にともなう森林炭素蓄積量、樹木サイズ特性とともに群集組成の変異を調べました。また、森林内やその周辺に各種の自然撹乱・人為撹乱の痕跡が見られた場合には、それらもあわせて記録しました。その結果、標高1000 m未満の森林の群集組成には、自然撹乱要因として土壌侵食の影響がみられた一方、標高2400 m以上の森林の群集組成には、農業用の小屋や歩道の存在など人為撹乱要因が顕著に影響を及ぼしていることが示されました。また、森林構造の特性として平均樹高が、標高帯の違いによらず一貫して群集組成の違いに影響していることが明らかになりました。
本研究により人為撹乱の影響が、特にアンデスの高標高域の森林で顕著となっていることが明らかとなりました。本研究の成果は、アンデスの森林における森林劣化の広域評価に役立てていきます。
表の説明
本研究の調査地では、群集組成の違いに及ぼす標高の影響が大きいため、標高以外の変数の影響を評価するためには、標高の影響を除く必要がありました。そこで、標高のみを説明変数とする統計モデルと標高とそれ以外の変数を含むモデルでAIC(赤池の情報量基準)(注)の比較を行いました。低標高では標高と土壌侵食のモデル、高標高では標高とインフラ(農業用の小屋や歩道など)のモデルでAICの差が負の数となり、標高のみのモデルよりも群集組成の予測が改善されたことが示唆されました。
(注)統計モデルの予測の良さの表す基準。AICが小さいほど、より良い予測をするモデルといえます。