熱帯のマングローブ:気候変動の緩和と適応に対する潜在能力
開催報告
*日時 : 2017年11月13日(月曜日) 16:45-18:15
*場所 : ドイツ連邦共和国、ボン(ボンゾーン、ミーティングルーム4)
*参加者 :
開会挨拶 牧元幸司 林野庁 次長
講演
・Prof. Daniel Murdiyarso CIFOR主任研究員
・Dr Ruandha Agung Sugardiman インドネシア環境林業省森林資源インベントリー・モニタリング部長
・Ms. Cecile Bibiane Ndjebet コミュニティにおける森林管理のためのアフリカ女性ネットワーク(REFACOF)代表(カメルーン)
・平田泰雅 森林総合研究所REDD研究開発センター長
・森田隆博 JICA地球環境部審議役兼次長(森林・自然環境グループ長)
とりまとめ Dr. Gerhard Dieterle ITTO事務局長
モデレーター Dr. Hwan-ok Ma 国際熱帯木材機関(ITTO)
概要
冒頭、林野庁の牧元幸司次長から開催挨拶が行われました。牧元次長は、かつての赴任地鹿児島におけるマングローブのもたらす便益のエピソードを披露しつつ、パリ協定の下で、気候変動の緩和策の強化のみならず、気候変動への適応活動の推進の必要性について言及しました。
講演では、Daniel Murdiyarso氏(CIFOR)、Ruandha Agung Sugardiman氏(インドネシア環境林業省)、平田泰雅氏(森林総合研究所)、Cecile Bibiane Ndjebet女史(REFACOF)、森田隆博氏(国際協力機構)が登壇しました。
Daniel Murdiyarso氏は、「Mainstreaming mangrove potential into global CC mitigation and adaptation policy」と題し、マングローブを含む沿岸生態系による炭素固定、ブルーカーボンが緩和対策上非常に重要であることを指摘しつつ、世界的に見たマングローブの緩和及び適応における位置づけについて概括的に説明しました。
Ruandha Agung Sugardiman氏は、急遽出席ができなくなったNur Masripatinインドネシア環境林業省気候変動総局長に代わり、「Role of Mangrove Ecosystems in Addressing Climate Change Mitigation and Adaptation in Indonesia」と題し、インドネシアには290万ヘクタールのマングローブ(世界のマングローブの約3割)が分布していることを紹介しつつ、マングローブは緩和や適応だけでなく、生活や経済、海岸地域の保全対策上きわめて重要な役割を担っていることを説明しました。一方で、海岸地域の開発による脅威にさらされているとし、こうした脅威から、多様な役割を担っているマングローブの保全の必要性を訴えました。
Cecile Bibiane Ndjebet女史は、「Women in mangroves restoration and management in Cameroon: linking gender to mangroves in the context of Climate Change」と題し、カメルーンの海岸線の約3割にマングローブが分布している一方、保全が十分なものはそのうち30-35%にとどまっていることを紹介しました。その上で、マングローブ生態系が持続可能な開発目標(SDG)5「ジェンダー平等」に貢献しているとの認識を示し、多くの地域で、女性はマングローブの再生活動、食糧生産のためのアグロフォレストリーの導入、クリーンエネルギーの促進、エコツーリズムを含む収入創出の活動に、先導的に取り組んでいることを紹介しました。その一方で、キャパシティ・ビルディング、資金調達へのアクセス、および所有権を確保する法的枠組みの確立等を通じて、女性のさらなるエンパワーメントが必要であることを指摘しました。
平田泰雅氏は、「Measuring mangrove blue carbon」と題し、2004年にインド洋で発生した津波ではマングローブが被害から守る役割を果たしたと同時に、マングローブ自身は大きく被害を被ったことを紹介しつつ、マングローブは、ブルーカーボンとしての炭素貯蔵といった緩和の機能、地域社会の生活の維持といった適応といった緩和と適応両方にかかわる生態系であるとの認識を示しました。その上でブルーカーボンの計測とモニタリングが行動計画を策定する上で重要であるとし、フィールドレベルでのマングローブの炭素の計測、リモートセンシングによるブルーカーボンのモニタリングについて、科学的見地に立って解説しました。
森田隆博氏は、「JICA Cooperation Approach for Blue Carbon Ecosystem Conservation」と題し、他の講演者同様、マングローブの地中に熱帯地方の地上部との比較において6-7倍もの炭素が貯蔵されているとし、現在フィリピン及びインドネシアにおいて取り組まれている「コーラル・トライアングルにおけるブルーカーボン生態系とその多面的サービスの包括的評価と保全戦略」のプロジェクトにおいて、ブルーカーボンのモニタリング手法開発やCore and Networkシステム構築を通じた、ブルーカーボン生態系の保全に取り組んでいることについて紹介しました。
最後の質疑応答では、熱帯におけるマングローブの管理から得た教訓などへの質疑が行われ、パリ協定及びSDG目標(14:海の豊かさを守ろう、15:陸の豊かさも守ろう)への対処に向けてマングローブのもつ能力・緩和と適応の特性について共有が図られました。
セッションの取りまとめでは、ITTO事務局長のディターレ博士が、沿岸地域における土地利用計画の立案、多面的な便益を考えたマングローブ林経営の統合、地域社会の生活が向上できるような革新的資金メカニズム、沿岸の保護、マングローブの喪失と劣化の防止などが必要の必要性を呼びかけました。
*プレゼンテーション資料はこちら(ITTOウェブサイトへ移動)
熱帯のマングローブ:気候変動の緩和と適応に対する潜在能力
日時
2017年11月13日(月曜日) 16:45-18:15
場所
ドイツ連邦共和国、ボン(ミーティングルーム4、ボンゾーン)
概要
マングローブは、大気中の炭素を隔離・貯蔵し、その結果気候変動を緩和する役割を果たす、熱帯地域における最も炭素に富む生態系の1つです。マングローブの生態系が持続的に管理経営されれば、様々な産品の生産や環境サービスにより何百万の沿岸住民の生活を支えつつ、地球規模で膨大な量の炭素を貯蔵することができます。
しかし、マングローブは大きな森林減少の圧力に直面し、その結果劣化した土地の増加と温室効果ガスのさらなる排出をもたらしています。
世界のマングローブは、過去50年間でほぼ半分を失い、現在、約1.35百万ヘクタール(FAO 2007)となっており、こうしたマングローブの生態系にかかる課題が、NDC(自国が決定する貢献)、REDDプラス、NAMA(途上国における適切な緩和行動)など、適応と緩和対策が相乗的に実施可能な国際的な場に持ち込まれる可能性は高くなっています。
本イベントでは、熱帯におけるマングローブの管理から得た教訓を共有するとともに、パリ協定第5条及びSDG14(海の豊かさを守ろう)及びSDG15(陸の豊かさも守ろう)に対処するため、マングローブのもつ能力を理解するためマングローブの重要な緩和と適応の特性について議論を行います。
プログラム
モデレーター:Dr. Hwan-ok Ma(国際熱帯木材機関(ITTO))
開会挨拶:牧元幸司(林野庁次長)
スピーカー:
・Prof. Daniel Murdiyarso, Senior Scientist, Center for International Forestry Research (CIFOR)
・平田泰雅, 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所(FFPRI)REDD研究開発センター長
・Dr. Nur Masripatin, Director General of Climate Change, Ministry of Environment and Forestry, Indonesia
・Ms. Cecile Bibiane Ndjebet, President, African Women's Network for Community Management of Forests (REFACOF), Cameroon
・Ms. Jenny Wong Lai Ping, Programme Officer, Mitigation, Data and Analysis Programme, UNFCCC Secretariat
・森田隆博, 独立行政法人 国際協力機構(JICA)地球環境部審議役兼次長(森林・自然環境グループ長)
閉会挨拶:Dr. Gerhard Dieterle, Executive Director, International Tropical Timber Organization (ITTO)
連絡先
森林総合研究所:平田泰雅, climate@ffpri.affrc.go.jp
国際熱帯木材機関:Dr. Hwan-ok Ma, ma@itto.int